26歳男性「正社員で年収200万は幸運」の真意

農業を目指したが「行政のミス」で挫折

関東圏に移った後の目標は、農業で再起すること。収入のことを考えて畑違いの仕事への転職も試みた。しかし、就職活動では、独立のために短期間で農業法人を退社したことや、農業収入の不足分を補うために就いたアルバイトなどの履歴が不利になったという。履歴書を見た面接官から「なんでこんなに転職してるの?」などと批判めいた口調で聞かれるのだ。現在、通っているハローワークの講習会の講師からも「履歴書に一貫性がない」「(四国での)自営業の期間が短いのは印象が悪い」と指摘される。

「講師はハローワークに天下りした60代の元公務員です。アドバイスをしてくれているのはわかるのですが、あなたたちのときとは時代が違うと言いたくなります」

ダイスケさんは「履歴書は妻のほうが悲惨なことになっている」という。彼が厳しい中でも正社員の仕事を探したのに対し、彼女は正規、非正規を問わず、働けるところで働いたからだ。履歴書の職歴欄は、薬局のアルバイトや市役所の契約職員、NPO法人の臨時職員など非正規雇用がほとんどで、雇い止めによる転職回数も多い。

取材では、妻も話を聞かせてくれた。

「この1年で20社くらいの面接を受けたでしょうか。面接官からはたびたび“あなたの履歴書からは、何の魅力も感じない”“契約社員とか、アルバイトが多いね”“勤続期間が短いね”と言われます。履歴書を見ただけで何がわかるの?と思いますが、不採用が続くと、今まで頑張ってきたことをすべて否定された気持ちになり、落ち込みます」

夢に向かって挑戦し、努力を惜しまなかったという自負がある。それに、不安定な非正規雇用を増やしてきたのは社会のほうではないのか。たった一度、つまずいただけなのに、再起のチャンスをつかむことも許されない――。疎外感にさいなまれながら、ダイスケさんがなんとか職を得たのが、冒頭の年収200万円のガス販売会社だった。

しかし、ここでもトラブルに見舞われる。

財布泥棒の「犯人」として疑われた

入社から1年がたったこの春、職場でアルバイトの財布が紛失する事件が起き、ダイスケさんが犯人として疑われたのだ。盗まれたという時間帯に、事務所には彼しかいなかったなどの不利な状況に加え、事件前、上司から接待用にゴルフセットをそろえるよう言われたときに自腹で買うのかと尋ねたり、営業車のガソリン代は経費で賄えるのかと確認したりしたことも、周囲におカネに執着する人間という印象を与えてしまったようだ、と言う。

「同期入社の友人から“雇ってくれている会社におカネのことを聞くのはまずかったね”と言われました。でも、それって、ちゃんと確認しないといけないことですよね」とダイスケさんは途方に暮れる。会社からは退職を促され、結局はそれに応じた。

現在、毎月の手取りはダイスケさんの失業保険と、妻のパート収入を合わせた28万円ほど。失業中につき、家事を引き受けている彼によると「肉類は格安スーパーで買うグラム40円の鶏むね肉だけ。果物はぜいたく品です。飲料水は大型スーパーで、無料でもらえるサービスを利用しています」。相変わらず歯の治療には行けないので、虫歯は抜けるに任せるしかない。

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