全米が泣いた「日系アメリカ人議員」の正体 オバマケア撤廃反対を命懸けで呼びかけた

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「私が腎臓がんに冒され、最初の手術を受けたとき、多くの同胞――民主党議員だけでなく、競合政党の同胞たちも――私を励ますために自分たちの経験を共有するなどすばらしいメッセージをくれた。あなた方は私を気遣ってくれた。あなた方は思いやりを示してくれた。今夜、あの気持ちはどこへ行ってしまったのか」

結局、米上院は28日未明の本会議採択で、オバマケア撤廃案を賛成49、反対51で否決。マケイン議員のほか、2人の共和党議員が反対票を投じた。これで、オバマケア改正案は再び振り出しに戻ったわけである。

「これが最後の機会かもしれない」

後にヒロノ議員は、このときのスピーチについて、ネットニュース「デイリー・ビースト」にこう語っている。「私は、スピーチをする前に、大きな不安とともに座っていた。これは私の家族の物語であり、私の姉妹の死についても及ぶからだ」。しかし、同氏がそこに座っていたとき、自らの危険な健康状態に気がついて、「『これは、私がこのことについてハッキリと話せる最後のときとなるかもしれない』と思った」。

議会でスピーチをした後、ヒロノ議員は米国会議事堂の建物の階段で群衆に、あらゆる米国人は良質な医療を受ける権利を有している、と語った。「これは富裕層の特権ではない」。

そして同氏はこう続けた。「すばらしいのは、私自身、医療保険があることで、必要な治療費をどうやって賄ったらいいのか、心配せずに済んだことだ。そして、健康になるための治療に専念し、皆さんと一緒に闘うために今こうして、議事堂の階段に立つことができるのだ」。

同じハワイ州出身のブライアン・シャッツ上院議員は、27日のスピーチをこう振り返る。「メイジーは、上院で最もタフ議員の一人だが、心の内を率直に話すタイプではない。その彼女が胸の内をさらけ出したからこそ、その影響は絶大だったのだ」。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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