北朝鮮が「米国本土」を攻撃できない根本理由 金正恩の「脅し」に恐れる必要はない

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もし彼が規則どおりにソビエトの指導者へ報告していたなら、ほぼ間違いなく報復攻撃が行われたはずだ。今日、同様の技術的な誤りが発生した場合、北朝鮮の兵士が国外の状況を鑑みる見込みはほとんどなく、結末は異なるだろう。

幸いなことに、64年後、衝突の両方が全面戦争を避けられるまでに成熟している。そして、米政府にはその醜い道を避けるためのほかの選択肢がある。

すべての行動にリスクが伴う

ひとつは、朝鮮半島に適切な軍隊を維持することで、もうひとつは、北朝鮮と、米国の同盟国である韓国と日本にその防衛姿勢を伝えることである。トランプ政権はまた、同盟国との積極的な経済・政治関係を維持しなければならない。

すべての行動には、必然的にいくつかのリスクが伴う。米政府が北朝鮮政府の武器開発のペースを遅らせることを目的に2次制裁を科すことによって中国の企業や銀行が北朝鮮との関係性について調査を受けることになれば、日中関係に摩擦が生じかねない。米国が軍事演習をやめる代わりに、北朝鮮が核開発をやめるという凍結契約を結んだとしても、政治的、あるいは、軍事戦略的なリスクが浮上するだろう。

米国は、北朝鮮の経済成長や社会的な変化を支援することによって、長い目で見れば、北朝鮮の姿勢を変えることはできるだろう。しかし、この方法は北朝鮮との交流やつながりを促進せねばならず、制裁とのバランスを取るのが難しい。

北朝鮮問題を迅速に解決する方法はない。しかし、今のところ、少なくともカリフォルニアの人々が、北朝鮮のミサイルが今にも彼らの住んでいるところを襲ってくる、と恐れるべきではない。

著者のアンドレ―・アブラハミアン氏は、オーストラリアのマクォーリー大学フェロー、北朝鮮で職業教育を行う国際NGO(非政府組織)「朝鮮交流」副所長。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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