パリはシティに代わる金融センターになるか EU離脱を巡ってイギリスとフランスが暗闘

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マクロン仏大統領はEUにおけるフランスの存在感発揮に懸命だ(写真:Sipa Press/amanaimages)

多くの旅行客を魅了するフランス。2016年に同国へ足を運んだ外国観光客は8260万人に達した。テロの頻発などで前年から約2%減少したが、それでも依然、世界第一の観光大国の座は揺るがない。

”花の都”と称される首都・パリでは、「グラン・パリ」と呼ばれる大規模な都市再開発計画が進行中だ。高速自動運転鉄道の敷設や商業・宿泊・教育施設の整備などを通じて、より競争力のある国際都市に再生しようというものである。「グラン・パリ・エクスプレス」という名称の鉄道網整備には、2030年までに250億ユーロ以上が費やされる見込み。2024年の夏季五輪・パラリンピック、翌2025年の万博誘致にいずれも名乗りを上げており、2つの大イベント開催が実現すれば、再開発に弾みがつきそうだ。

6月には同計画の関係者が日本を訪れた。日本企業にパリの魅力をPRするのが狙いだ。不動産、アセットマネジメント、コンサルティング会社らで構成されるミッションのメンバーは、異口同音にこう語った。「ブレグジット(英国のEU離脱)は追い風である」。

英国から大陸に金融機関が逃げ出す?

国民投票でのブレグジット決定から1年余り。英国に拠点を置く海外企業の間で、EU(欧州連合)域内に新たな足場を築こうとの動きが活発化してきた。中でも注目されているのは金融機関。現在はEUのいずれかの加盟国で免許を取得すれば、域内全域で営業が可能な「単一パスポート制度」が採用されているが、英国がEUを離脱すれば、同国で取得したパスポートは利用できなくなるおそれがある。

実際に利用が不可能になるか否かは、6月から始まった英国とEUのブレグジットをめぐる交渉の行方次第である。先立って行われた同国の総選挙では、与党・保守党が過半数の議席を確保することができず、"ハングパーラメント(宙ぶらりん)"の状態に陥った。

EU離脱で強硬姿勢を貫いてきたテリーザ・メイ首相は、国内での基盤固めに失敗した格好で、両者の離脱交渉はEUが有利な状況と見られている。「EUが決めたことを英国が一方的に受け入れなければならない立場に追い込まれるようだと、『離脱に意味があるのか』との見方が台頭して、『離脱撤回』という道を選択するケースもなくはない」(ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり・上席研究員)。

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