なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?

『現代オカルトの根源』の著者、大田俊寛氏に聞く

 「最近はよくスピリチュアルって言いますけど、昔で言えばオカルトですよね」──オウム真理教による地下鉄サリン事件から16年を迎える頃、ラジオからこんな声が聞こえてきた。
 かつてのオカルトブームの際に唱えられた『ノストラダムスの大予言』=「1999年人類滅亡説」はすでに過去のものとなったが、昨年暮れにもまた、マヤ暦の終焉に基づく「2012年人類滅亡説」がささやかれたことは記憶に新しい。
 一部の人々をとらえて離さないオカルト思想を「霊性進化論」という思想体系から読み解いたのが、『現代オカルトの根源──霊性進化論の光と闇』(ちくま新書)だ。今回、著者で宗教学者の大田俊寛氏に「霊性進化論とは」「オウム真理教の最終目的」「オカルトとサブカルチャー」などについて話を聞いた。

ビジネス界とオカルト

――本書では、現代のオカルティズムが主なテーマとなっています。一般にオカルトに対しては、一部の好事家だけが扱う特殊な世界という印象があると思われるのですが。

いえ、そんなことはありませんよ。その発想は、ビジネスやジャーナリズム、サブカルチャーの世界にもみることができます。

たとえばビジネス界には、船井幸雄という著名な経営コンサルタントがいますが、彼は典型的なオカルティストであり、本書で言う「霊性進化論者」のひとりです。

氏の代表作である『エゴからエヴァへ──地球が変わる・人類が変わる』(PHP研究所)や、『百匹目の猿──思いが世界を変える』(サンマーク出版)では、一部の先進的な人間に意識変革が起こることにより、地球全体の精神レベルを上昇させることができると説かれています。

ここ数年間の船井氏は、「2012年終末論」に盛んにコミットしていました。すなわち、2012年を境に、霊的に進化した人々が「アセンション(次元上昇)」を達成する一方、物質に囚われた人々は淘汰されるといった話ですね。意識革命を達成した人間、霊的に進化した人間が、ビジネスや政治や文化において先導者になるべきだというのが、船井氏の根本的な人間観です。

ビジネスの世界においては、何らかの仕方でイノベーションを起こし続けることが、つねに求められています。そのために多くのビジネス書では、「自己啓発」という名目で、新しい自分に生まれ変わる必要性が繰り返し説かれるわけです。その中にみられるさまざまな精神論は、元をたどれば、オカルトの世界に発していることが多いのですね。また、いわゆる「国際金融資本」にまつわる数々の陰謀論も、主にオカルトの分野を介して普及していったものです。

――今、お話に出た「霊性進化論」は、本書の副題にも挙げられていますが、どのような思想を指すのでしょう?

その端緒と見なされるのは、19世紀後半、ロシアの霊媒ブラヴァツキー夫人が創始した「神智学」というオカルト思想です。彼女は『シークレット・ドクトリン』という著作において、ダーウィンの生物学的進化論に対抗し、「根幹人種論」という特異な進化論を提唱しました。それによれば、地球上で人類は、第1から第7まで、7つの根幹人種を経て段階的に進化する。そして人間は、ひとつの生物種として肉体的に進化するのみならず、その「霊性」もまた進化するのだと唱えたのです。

さらにブラヴァツキーは、人類の中には「神人」に進化しうる種子が含まれている一方、霊性の次元から目を背けて「動物化」する人間もいる、という二元論を立てたのですね。私はこうした考え方を「霊性進化論」と呼んでいます。

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