フリーゲージ、国の見方は「完成へあと一息」 コストは倍、試験再開時期は未定だが…

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フリーゲージトレインの台車(記者撮影)

だが、専門家による技術評価委は、耐久走行試験に移行する場合は「車軸の交換周期を延伸するための新たな対策を立案し、その交換を確認することが必要」との評価を下した。実用化に向け不可欠である耐久走行試験を再開するにはまだ一定の試験が必要との判断で、導入できる時期はさらに遅れることになる。コストも下がったとはいえ、一般の新幹線と比べて倍はかかる計算だ。

FGTの開発スタートは1999年と今から20年近く前。これまでに約500億円を投じて開発されてきた中で、ここに至るまで「車軸の摩耗」という根本的な問題点は検証されてこなかったのだろうか。

FGTが走る日は来るか?

2007年から行われた2次試験車による試験では、在来線で約7万kmを走りこみ、新幹線では時速270km走行の試験も行われた。これらの結果を受けて「基本的な耐久性能の確保にめどがついた」として製造されたのが3次車だ。2次車と3次車の台車はほぼ同じ構造で、車両の重量は3次車のほうが軽量化されている。車軸の摩耗などは予見できなかったのだろうか。

この点について、国交省鉄道局の岸谷克己施設課長は、2次車での時速270km走行試験は「(時速270kmを出すのは)瞬間的だったので、3次車の耐久走行試験とは異なる」と説明。「FGTの構造にとって、高速域での耐久走行は思った以上に過酷だったということに尽きる」と話す。

技術的な困難を抱えつつ開発が続けられてきたFGT。確かに技術面では進化を続けており「高速走行でなければ問題ない」との声もある。とはいえ、現在のFGTは九州新幹線長崎ルートの実現に向け、新幹線での高速走行を実現すべく開発が進められてきた。与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームが示す方針は、長崎ルートの将来像はもちろん、FGTという技術そのものの今後も左右するかもしれない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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