どのようにしてLINEは生まれたのか | こんな働き方があってもいいじゃないか

どのようにしてLINEは生まれたのか

どのようにしてLINEは生まれたのか

日本発アプリ「LINE」を生み出したチーム

野本 纏花
ブランドコンテンツとは
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「あの企業はどんなツールを使って、アイデアをカタチにするチームを作っているんだろう」。 無料通話・無料メールスマートフォンアプリ「LINE」の勢いが止まりません。前回の記事では、チームでの情報共有の仕方やコツについて聞きました。 今回は、サイボウズが協賛する「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2012」にLINE開発チームが選ばれたことを機に、LINE開発に関するチームワークについてもう少し掘り下げて伺いました。

インタビューに答えてくれたのは、ウェブサービス本部の稲垣あゆみさんと、金子智美さん。「メンバーは戦友」と語るお二人が語るLINE開発の背景にはどのようなエピソードがあるのでしょうか。


終始やさしく笑顔で話してくれた稲垣さん。社内でLINEに関する質問はすべて稲垣さんのもとに集まってくるようです。

最初は、写真共有サービスを考えていた

――取材は2度目になりますが、今回はまた違った視点からいろいろ伺いたいと思います。まずは、LINEを開発したきっかけを教えてください。

稲垣:プロジェクトがスタートしたのは2010年の年末でした。当時の当社は「NAVER JAPAN」という検索サービスが中心の会社でした。もっと主力になる新しいソーシャルなサービスを作ろうと、3人で新規事業開発のプロジェクトチームを立ち上げたのが、LINEの始まりです。キーワードは「アプリケーション」と「リアルでクローズドなもの」。その中で、どんなサービスにするかと検討していく中で、メッセージングと写真共有サービスの2つが候補として残り、2011年の2月までブラッシュアップを続けていました。具体的な画面設計やデザインに着手した頃に東日本大震災が起きました。そのときは、写真共有のアプリを先にリリースするつもりで開発を進めていたのですが、地震でメッセージングのアプリが日本で求められていると判断し、メッセージングアプリの開発を4月末から本格始動しました。

――最初は写真共有のサービスが立ち上がる予定だったんですね。そこからリリースまでの過程はどのようなものだったのでしょう?

稲垣:リリースしたのは2011年の6月23日です。4月末に開発スタートだったので、すごいスピードで開発しました。まずはリリースすることを優先に置き、最初は今のLINEと違って文字が送れるだけのシンプルなものにしました。それでなんとかリリースにこぎつけたという感じです。


広報だけでなくソーシャルメディアでのアクティブサポートも担当されている金子さん。相変わらず笑顔が素敵です

LINEができた当初はつらかった

――リリースから半年で1,000万ダウンロードを達成されていますが、そこまでの道のりはいかがでしたか?

稲垣:メッセージングサービスは、自分と自分の周りの人たちが使っていないと面白くないサービスです。リリースした当初は、文字を送れるだけのシンプルなサービスでしたので、「何を売りにすればいいんですか!?」と、マーケティングチームも困っていました。サービスとして生き残るために、LINEの特徴を早く作り出さなければいけませんでした。このときがチーム全体にとって一番つらい時期でしたね。「メッセージングだったらLINE」という雰囲気を、どれだけ早く作り出せるかが勝負でした。

金子:最初から爆発的に大成功したように言われるんですけど、全然そんなことはなくて・・・。小さい機能改善を繰り返し、いろんなプロモーションを試行錯誤してきました。始めは失敗もありましたね。

稲垣:製品販売から4か月後の10月に無料通話とスタンプの機能を追加しました。現在の状況は必死に製品を開発していたら、これだけたくさんの方から支持していただけるサービスになったという結果でしかなくて。最初からこうなるとわかっていたわけではありませんでした。


リリース当初のLINE画面。赤く囲った部分が現在と違うところ。左側のトーク画面では、スタンプ・顔文字を入れるマークがなく、右側の友達リストでは、メニューバーが現在と異なり、タイムラインが無い。

メンバーとの密なコミュニケーションがスピード対応の秘訣

――機能改善の要望など、ユーザーの声はどのように集めているのですか?

金子:毎日、広報でソーシャルメディア上の声を拾って全社向けにレポートしています。また、お問い合わせがある中で多いものや深刻なものを優先的に対応しています。

稲垣:あとは、メンバーがそれぞれにアプリストアのレビューを見ていて、問題を見つけたらすぐに対応しています。

金子:こちらからアンケートを取らなくても、ユーザーさんから感想を教えてくれるので、それはとてもありがたい環境ですね。ソーシャルメディア上の声が大事だという社内全員の共通認識があるので、休みの日でも偶然バグを見つけたら、すぐに連絡してくれたりします。

――その連絡はLINEでですか?

稲垣:そうです。連絡や確認もLINEの中にいろいろグループを作って、みんなで話しながら仕事をしています。リリース前のテスト環境からずっとLINEで話し続けているので、休みがないんですよね。でも、LINEの開発にスピードがあるのは、LINEのおかげだなと思います。

――迅速な対応にはLINEが欠かせなくなっているんですね。LINE以外の秘訣はありますか

稲垣:マネージャー層の意思決定がとにかく速いです。現場と同じかそれ以上の知識があるので、現場判断とのかい離がほとんどありません。スピーディに意思決定できる環境も大きいと思います。

金子:普通、逆ですよね。意思決定がマネージャーで止まることが多いと思うんですけど、逆に上からどんどん指示があるから、追いつかなきゃって。

稲垣:ソーシャルメディアへの対応や、会社としての迅速な意思決定に対応していると、現場がフレキシビリティの塊になってきます。臨機応変に対応していくスキルが必要になりますね。そして、LINEでずっと話しながら開発を進めていくので、チームメンバーはもう戦友みたいな感じになります(笑)


今や、LINEのシンボルともなったスタンプ

スタンプ開発秘話

――LINEと言えば、やはりスタンプだと思うのですが、ここまで人気が出ると思われていましたか?

稲垣:正直、スタンプがひとつのビジネスモデルとして、こんなにうまくいくとは思っていなかったです。開発している時も、デザインの試作を見た時も、本当にこれでいいのかなって、あまり自信がありませんでした。
でも、10~20代の方を集めてユーザーリサーチをしたときに、他の人はいまいち反応が良くなかったのに、女子高生だけにはすごくウケていたんです。そして、テスト環境で実際に使ってみると意外とおもしろかった。そこから自分たちが作っていても楽しくなって来たので、もしかしたらヒットするかもしれないという期待は出てきました。ただ、同時期に追加した無料通話機能で開発がいっぱいいっぱいだったこともありましたし、CMも無料通話を全面に出していたので、スタンプがここまで爆発的に人気が出るとは、想像を超えました。

金子:オリジナルのキャラクターがどんどん人気になってきて、ソーシャルメディア上でも「ムーンのOLバージョンが欲しい」といった声が挙がるようになりました。今はユーザーさんの声を元に、どんどん新しいキャラクターが増えています。

稲垣:コニーとブラウンのラブラブなデザインも、ユーザーさんの声からですね。おもしろいのが、Twitterで「LINEを使ってよかったことを教えてください」というキャンペーンをしたときに、「うちの旦那がブラウンにそっくりなんです!」「うちの彼氏がブラウンなんです!」「私がコニーで、いつも送り合っています!」と教えてくれたカップルが、日本でも世界でもすごく多かったんです。 無口なブラウンと表情豊かなコニーの組み合わせがぴったりなんでしょうね。


こんなにスタンプが人気になるとは思わなかった、と語る二人。やはりJKの力は強い・・・?

1億ユーザーを目指して

――目標設定はどのようにされていますか?

金子:今年の年末までに、世界で1億ユーザーを目指そうというのを掲げていて、社内にポスターを貼っています。 5,000万ユーザーを達成したときに「祝5,000万ユーザー!目指せ1億!」っていう(笑)もともと会社の進め方として、あんまり先の目標は立てないんですよ。あまり先の目標を立てても、1年後にどうなっているかわからないし、それよりも目の前の状況に合わせて最善を尽くすことをずっと続けて行くスタイルなので。「3ヶ月以上先は未来だ」って、よく言っていますね。

――今後の展開は?

稲垣:サービスが世の中に出ることをファーストステップ、ユーザーが増え、サービスが定着化した段階がセカンドステップととらえ、現在は、LINEのプラットフォームを活かしながら、何がLINEのユーザーと一番親和性が高いかを見るために、いろんな機能を追加している段階のサードステップに入ったと認識しています。一方で、現在はユーザーがすごく増えている時期なので、安定性や質の向上をとても大事にしています。みなさんに使っていただくプラットフォームとしての信頼性を高める努力をこれからも続けていきます。

(写真撮影 :橋本 直己)