カタールがLNG大増産計画、アジアで顧客争奪

年間生産量は世界全供給量の3分の1に?

 7月5日、カタールが4日発表した液化天然ガス(LNG)生産の大増産計画は、オーストラリアや米国、ロシアなどの競争相手に対してアジアなどでの顧客争奪戦を仕掛けようとしている。カタールの首都ドーハで6月撮影(2017年 ロイター/Naseem Zeitoon)

[シンガポール 5日 ロイター] - カタールは4日、液化天然ガス(LNG)生産の大増産計画を発表して市場を驚かせた。今後5─7年で年間生産量を世界の全供給量の3分の1に当たる1億トンに高める方針で、オーストラリアや米国、ロシアなどの競争相手に対してアジアなどでの顧客争奪戦を仕掛けようとしている。国交を断絶したサウジアラビアなどアラブ4カ国との長期的な対立に備えようという姿勢もうかがえる。

カタールは世界最大のLNG輸出国。近年はオーストラリアの挑戦を受けている中で、増産はその地位を守る上で役立つ。またアナリストによると、カタールは生産コストが低く、インフラも整備されているので、競争で優位に立てる条件が十分にそろっているという。

サンフォード・C・バーンスタインの石油・ガスシニアアナリスト、ニール・ベバリッジ氏は「カタールは市場シェアを失いつつあるが、再びLNG市場でナンバー1になれる可能性がある」と指摘した。

市場シェア争いの主戦場はアジアだ。この地域はLNGの全世界消費の70%を占め、LNGは汚染物質を排出する石炭を使わずに、増大するエネルギー需要を賄うことができる重要な資源とみなされている。

最も大口の消費先は日本や韓国などの電力会社で、これらの業界からはカタールの増産計画には意表を突かれたとの声が聞かれた。韓国ガス公社(KOGAS)の広報担当者は「なぜカタールが増産するつもりなのかを解明する必要がある。われわれはカタールから新規のLNGカーゴを輸入する計画はまだ持っていない」と話した。

ライバルの動きは?

ライバルの動きを見ると、オーストラリアは2019年までにカタールからLNG輸出国トップの座を奪おうと、数千億ドルに上る投資を実施している。

ロシア国営の天然ガス企業ガスプロム<GAZP.MM>は4日、19年終盤までに新規のパイプライン経由で中国にガスを供給する意向を表明。供給予定時期は大方の予想よりも前倒しされた。中国もLNGやパイプラインのインフラ拡張に向けた膨大な投資をしている。

さらにイランは3日、仏トタル<TOTF.PA>と中国石油天然気集団(CNPC)と提携し、カタールと共有するガス田での生産に乗り出すと発表した。

サンフォード・C・バーンスタインのベバレッジ氏は、カタールの増産計画は、トタルがイラン側のガス資源の開発を再開したことに対応したのではないかとの見方を示した。

カタールとしてはこうしたライバルへの守りを固めることが大きな利益となる。同国はLNGとコンデンセートの輸出によって豊かな国になった。そしてLNG輸出を年間1億トンまで増やせば、現行価格で計算しても約300億ドルの収入が得られ、これと別にコンデンセート輸出で60億ドルが懐に入る。

世界銀行によると、国民1人当たりで12万ドルの所得に相当し、カタールを世界で最も金持ちの国へと導こうとしている。

買い手にメリット

カタールの増産で主に脅威を受けるのは、特に米国などでまだ最終的な投資を決めていない生産者だ。ウッド・マッケンジーのChong Zhi Xin氏は、カタールが低コストのLNG生産を増やせば、数多くの新規プロジェクトが市場から追いやられかねないと述べた。

足元のLNG市場は供給過剰状態にあり、買い手は従来主流だった新規の長期契約に調印することを渋っている。このためアジアでは、今は全供給量の15%程度しかないスポット市場の取引が今後活発化しそうだ。

競争激化で最終的には消費側が得をすることになる。ウッド・マッケンジーのアジア地域ガス・LNG調査責任者ケリー・アン・シャンクス氏は「LNG生産能力の拡大は、LNG価格がより長い期間下がるという意味になる。買い手にとっては朗報と言える」と話した。

(Henning Gloystein、Mark Tay記者)

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