アメリカがチームスポーツに強い意外な理由 「人を動かす」シンプルな話し方に秘密がある

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たとえば、2004年に上映された『Miracle』という、アメリカで行われたレークプラシッド冬季オリンピックのアイスホッケーの実話を基に作られた映画で有名なシーンがあります。

今も語り継がれる「氷上の奇跡」

オリンピック決勝ラウンド。大会4連覇中の無敵のソ連(現・ロシア)に対し、なんと代表に選ばれたのはアメリカ学生選抜の選手たち。ソ連戦の試合前のロッカールーム、国の代表として今日まで練習を重ねて迎えた大一番。不安と緊張の面持ちの選手たちがベンチに座り、ピンと張り詰めた空気の中、試合開始を待っていました。

実は、オリンピック直前に両チームはエキシビションゲームを行い、アメリカは3対10でソ連に完敗していました。そこに、ハーブ・ブルックスヘッドコーチが、コツッ、コツッと1歩ずつロッカールームに入ってきて、ゆったりと、でも真剣なまなざしで話し始めました。

「偉大な瞬間は偉大なチャンスから生まれる。

お前たちのチャンスは今夜だ。

それをその手でつかみ取ったんだ。

1試合だ。

10試合戦えばソ連が9回勝つだろうが、今日のこの1試合は違う。

今夜は敵と肩を並べとことん食らいついていく。

そして完全に封じ込めるんだ。必ずできる。

今夜は俺たちが世界で最も偉大なチームだ。

お前たちはホッケーをやるために生まれてきた。

今夜お前たちがここに来たのは運命だ。

その時が来たぞ。ソ連の時代は終わった。

もういいだろう。いい加減、聞き飽きた。

どこへ行ってもソ連はすごいという話ばかり聞かされ続けた。

でも、もう古い。

時代はお前たちのものだ。必ず奪い取ってこい!」

この言葉を言い残してヘッドコーチはロッカールームを去って行きます。そして、選手たちは心を震わせ感動し、リンクに出て行ったのです。試合は第2ピリオドの時点で2対3と負けていました。しかし、最終の第3ピリオドに2点を奪い、4対3と逆転。最後はソ連の猛攻をしのいで勝利をもぎ取ったのです。

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