2017年の東京都議会議員選挙は「都民ファーストの会」圧勝で幕を閉じた。安倍晋三内閣の相次ぐスキャンダルによって、自民党に対し強い逆風が吹いたとの見方が一般的だが、今回の圧勝はそういった「敵失」だけですべてが説明できるわけではない。
都民ファースト躍進の裏には、同会代表を務める小池百合子・東京都知事の周到で巧妙なコミュニケーションの「権謀術数」が隠されていた。
都民ファーストを包み込む「熱気」
選挙の帰すうは街角を見れば占える。支持者やスタッフのエネルギー、集まる人々のうなづきの頻度や相槌の言葉。筆者は今回、各党の街頭応援演説会をいくつも見て回ったが、自民党、民進党の弁士に対する冷めた視線と、都民ファーストを包み込む「熱気」の差は歴然だった。そうした「空気感」を生み出すコミュニケーションの高等戦術は随所に垣間見えたが、1つ目の柱は、小池知事の圧倒的な「話す力」(過去記事「都知事選『小池圧勝』は"対話力"で説明が付く」を参照)だろう。
小池知事は今都議選で100回を超える遊説をこなした。各選挙区をくまなく回り、最終日に八丈島に渡り、締めくくるはずだったが、天候の都合で飛行機が飛べず、足を延ばせなかった。都民ファースト候補者の50人のうちたった1人の落選者はその島嶼(しょ)部の候補者だった。もし仮に、飛べていたら、風向きが変わっていたかもしれない。そう思わせてしまうほど、小池知事のスピーチは神がかり的だった。
威風堂々と登場し、ひときわ声量のある声でその場を支配する気迫。「この私が太鼓判を押すから大丈夫」とお墨付きを与えられると、頼りなさそうな候補者でも、信頼できるような錯覚を与えてしまう。判を押したように同じ内容を繰り返すのではなく、毎回、その場に応じて内容をアレンジし、ユーモアを交え、聴衆を飽きさせない。感情的に叫んだり、他党をひたすら批判することもない(前回記事「怒りながら叫ぶ女」はどうして嫌われるのかを参照)。
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