ユニバーサル「岡田会長は経営者として不適」 富士本社長が株主への書簡で岡田会長を糾弾
[東京 29日 ロイター] - ユニバーサルエンターテインメント <6425.T>の富士本淳社長が、社内の資金に関し不正行為を行った疑いが浮上している同社の岡田和生会長について、「公開企業の経営者として不適格者と考えている」と株主からの書簡に回答していたことがわかった。不正疑惑が浮上した会長と、社内の浄化を目指す社長の対立軸があらためて浮き彫りになった。
ロイターが入手したユニバーサル株主と富士本社長の手紙のやり取りで明らかになった。
同社の岡田会長をめぐっては、社内の適切な手続きを経ずに資金を移動していた問題が明らかになり、同社の特別調査委員会がすでに調査を行っている。
同調査委の立ち上げはユニバーサルの富士本社長が指揮した。6月に調査委の立ち上げを発表し、それに先立つ5月末には、1969年の創業から経営をリードしてきた岡田会長を29日開催の定時株主総会で取締役候補から外すことを決議していた。
富士本社長に手紙を送ったのは、個人株主の細羽強氏(訂正)。同氏は、フィリピンのコンサルタントに行った送金が忠実義務・善管注意義務に違反しているとして、岡田会長や富士本社長ら複数の同社取締役に損害賠償を求める訴訟を起こしている。
細羽氏(訂正)は6月に送った書簡の中で、富士本社長が会社を浄化しようと試みていることが株主の望む方向と同じだとしたうえで、コーポレートガバナンスの適正化を図るため、社内の不正などこれまで取りざたされてきた問題について「真実をお話しいただきたい」と、直接の協議を申し入れた。さらに、対応によっては訴訟を取り下げる準備もあるとの意向を伝えた。
これに対し、富士本社長は、協議は断ったものの、返信の中で、「われわれは、残った真面目な人間だけで岡田会長の不正行為を調査し、一つ一つ丁寧に、想像や安易な疑いではなく、類推を排除した決定的な証拠を持って、真実を確定しつつある」と述べた。
岡田会長について、同社長は「公開企業の経営者として不適格者だと考えている」とし、「物理的な、完全な証拠のみで立証することに自信を持っている」と言明。5年前にさかのぼって「徹底調査している」ことを明らかにした。
ユニバーサルをめぐっては、カジノ事業を推進するため、フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)の幹部の側近だったコンサルタントなどに、2010年にユニバーサルの関連会社から総額4000万ドルが流出していた問題がある。しかし、社内調査が過去5年を対象にしたものだとすると、同事案は含まれないことになる。
ユニバーサルや岡田会長は、違法性はないと主張している。
個人株主の意見に経営者が回答をするのは極めて異例。同社長が手紙で株主に返信した理由や背景について、ユニバーサルはロイターに対し、「書簡を受領したこと、またそれに返信したこと、いずれも会社としては把握していない」としたうえで、会社としては、社長個人として行った行為についてコメントできない、とメールで回答した。
ロイターは冨士本社長とのインタビューも依頼したが、同社側は、特別調査委が進めている不正調査は「大変デリケートなものであり、慎重に進めるべき手続」と指摘。インタビューが報道された場合、特別調査委の調査を阻害することになりかねないため「インタビューその他の対応は差し控えざるを得ない」と回答している。
(江本恵美、ネイサン・レイン)
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