「月収20万円? 俺より稼いでるじゃないか」「転職先はボーナスがあるのか……。俺が代わりに行きたいよ」
「生活困窮者自立支援制度」の相談支援員ソウタさん(32歳、仮名)の心の声である。生活に困っている人たちの話を聞き、支援プランを提案するのが仕事だが、彼自身の年収は約210万円。精神保健福祉士という資格に対する手当1万数千円を除くと、毎月の手取りは、自身が暮らす関東近郊の生活保護水準と変わらない。自分より高収入の人に節約のアドバイスをしたり、担当した人の再就職先の待遇が自分より恵まれていたりといったことはしょっちゅうだ。彼はこう言って皮肉る。
「生活に困っている人を助ける仕事が、生活に困る人を生み出しているのです」
自治体は業務を外部委託している
生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至る前の「第2のセーフティネット」として、2015年度にスタート。就労支援や家賃補助、家計相談、子どもへの学習支援など、貧困にかかわる問題をワンストップで相談することができ、窓口業務は、福祉事務所を持つ自治体が実施している。
一方、多くの自治体は業務を社会福祉協議会やNPO法人などに外部委託しており、同制度の主事業である「自立相談支援事業」を直営で行っているのは4割に満たない。委託先の窓口で対応する相談支援員の身分は公務員ではなく、委託先事業者の職員。一部は年収200万円クラスで、ソウタさんがそれに該当する。貧困問題を解決するための制度が、新たな官製ワーキングプアを生み出す温床になっているのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら