200万人都市「札幌圏」JR電車通勤の実態とは 赤字体質のJR北海道で、唯一の稼ぎ頭

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この中の稲穂駅は、札幌の電車を一手に引き受ける札幌運転所に隣接している。だが、朝通勤真っただ中では、小樽へ向かう際に出発線に並んでいた721系や特急気動車編成は、きれいさっぱりと消えていた。その特急車両は、手稲発札幌行きの整理券方式通勤列車「ホームライナー」で一日の運用を開始し、札幌から帯広へ旅立ったはずである。

一方、明治の鉄道開通時から存在するのが手稲駅だが、今はまったくの都市型橋上駅で、日中は緩急接続を繰り返す2面4線のホームに国鉄時代の面影も探せない。海側は一画を大型スーパーが占め、ニュータウンの玄関のよう。手稲山に向けた坂道が延びる山側にもマンションが建ち並ぶ。ホームで待つ乗客のボリュームは圧倒的であった。

札幌駅ラッシュに見る道央鉄道事情

8時19分の札幌到着は7番線。ここで201系気動車3両を切り離し、前の電車3両のみが2738Mと列車番号を変えて苫小牧に向かう。8分停車の後、8時27分に出てゆくと、7番線ホームの発車標は「回送」のオンパレードになった。8番線に、かろうじて9時発の「カムイ7号」のみが営業列車として掲示されている。ラッシュの時間帯、7・8番線は基本的に下りの終着列車を集中的に取り込むようだ。

防雪林に守られた複線を走る区間快速「いしかりライナー」(撮影:久保田敦)

ピーク時の札幌駅はめまぐるしく、10線5面のホームにひっきりなしに列車が着発する。6番線から空港行き「エアポート」が出て振り向くや、9番線から岩見沢行きが出、5番線の「スーパー北斗6号」函館行きを挟んで、10番線からも岩見沢行きが後を追う。

鉄骨屋根の中に轟いていたエンジン音が消えたと思うと、6番線に手稲発の「ホームライナー」が到着し、それが8時54分発「スーパーおおぞら3号」となる。乗り込んだ人々は席にたどり着くや上着を脱ぎ、長旅に向けて安定感ある座席にくつろぐ光景が窓越しに浮かぶ。この間、8時50分の「エアポート」が5番線を出ると同時に、8番線に789系1000代の「カムイ7号」が入線する。

次の9番線からは江別行きが出てゆく。その721系の先頭は「uシート」車だった。「uシート」込みの「エアポート」用は6両編成であるが、検査入場時の予備用とし、先頭車を「uシート」化した3両編成が1本だけある。その稀少な車両だ。「エアポート」以外で運行する際は指定席ではなく誰でも自由にリクライニングシートに身を預けてよい。

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