行き場を失う、横浜市の放射能汚染焼却灰 市長選を前に、住民や港湾業者が“異議申し立て”

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ところが、地元住民や港湾業者にとっては、埋め立て処分そのものが「寝耳に水」(岩村和夫・本牧・根岸地区連合町内会会長)に等しいものだった。

11年9月15日の埋め立て開始を前にした8日の晩、岩村氏の自宅に突然、市役所の担当課長から電話がかかってきた。「急を要する話がありますので、明朝9時にご自宅にうかがいたい」。怪訝に思った岩村氏だったが、翌日その内容を知って腰を抜かさんばかりに驚いたという。

「実はこれまで放射性物質を含んだ汚泥焼却灰を、2700トンほど保管してきました。安全が確認されたので、9月15日以降に南本牧廃棄物最終処分場で埋め立てを開始します。ついてはご了承を願います」

市の担当者の説明を聞いた岩村氏は、「ちょっと待っていただきたい。8000ベクレルと言われても、何のことかわからない。賛成反対以前の問題だ」と抗議した。

港湾業者も反対を表明

同時期、運送会社や倉庫会社など約250社で構成する、横浜港運協会(藤木幸夫会長)にも、下水汚泥焼却灰埋め立ての話が舞い込んできた。報道機関向け発表前日の9月8日に港湾局の担当者が突然、協会にやってきて、「南本牧最終処分場の件ですが」と切り出した。「焼却灰を新たに投入したい。安全なものなので承知してください」と市の担当者は語ったという。

汚泥焼却灰の処分予定地とされた南本牧廃棄物最終処分場(横浜市)

応対した水上裕之・横浜港運協会企画部長は、その話を聞いて絶句した。「市が作成したペーパーを読んでみると放射性物質を含む焼却灰だという。

「『本当に大丈夫ですか』と聞いてところ、きちんとした説明がなかった」(水上氏)。そして「今まで灰はどうしていたんですか」と水上氏が問いただしたところ、「原発事故後、セメント会社が受け取ってくれずに困っている」との説明があった。そこで水上氏が「安全だというのならば、セメント原料として引き取るはずなのでは」と尋ねたものの、ここでも明確な答えはなかったという。

それからわずか6日後の9月14日、林市長自らが協会に駆け込んできた。

「会長、ごめんなさい。埋め立ては凍結します」と林市長。自身の後援会長でもある港運協会の藤木会長を前に、林市長は「説明不足」を詫びた。下水汚泥焼却灰をめぐる問題について、それまでの間に林市長と藤木会長の間に意思疎通はなかったという。

このように横浜市は当初からつまづいた。その後、住民向けの説明会や施設の見学会、横浜港運協会との勉強会など、関係者との協議を重ねてきたものの、いまだに一致点を見出すことができないでいる。

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