ヤフー、ECで「ポイント大盤振る舞い」の思惑 ソフトバンクユーザー厚遇でライバルを猛追

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――期待されるのは、ヤフーの収益柱である広告事業か。

ヤフーではこれまでも、ユーザーが「何を検索しているか」というデータを基に適切な広告を出すことで単価を高めてきた。ショッピング事業で得られる「何を買っているか」「何をカートに入れているか」というデータは、広告の最適化を進めるうえで検索データ以上に価値のある情報だ。

当然、アマゾンも楽天も買い物データを大量に持っているわけだが、うちは(ポータル、ニュース、天気、路線情報など)広告の掲出面となるウェブサービスとセットで持っているというのが大きい。買い物データそのものの価値の高さと、ヤフーとしての活用範囲の広さを考え合わせれば、今は多少コストを使ってもデータを集めに行くべきだろう。

中長期でショッピング単体の収益拡大も狙っていく。ただ、ヤフー全体、さらに外側のソフトバンクグループ全体で収益のあり方を考えたほうが、ダイナミックな戦い方ができるのは確かだ。その点に気づいてもらえれば、今のコストの使い方に納得いただけるはず。

ヤフーだけが特別なわけではない。アマゾンは物流やデータセンターが大きな利益の源泉になっているし、楽天は金融事業に強みがある。それぞれの企業グループにサービス提供の考え方、収益構造の作り方がある。

そういう意味では、従前のヤフーはショッピングに対して、あまり独自の収益構造を追求しておらず、先行する他社の物まねに近いような形だった。でも、よくよく考えればヤフーなりにできそうなことがいっぱいある。「広告屋がやっているEC」なんだと、再定義することができた。

買い物データの活用は進んでいる?

――すでに買い物データを広告に活用する動きは始まっている?

具体的にはまだだ。ただ、ヤフーショッピング内でデータ活用のテストを始めている部分はある。まずは広告ではなく、商品検索結果のパーソナライズだ。

小澤隆生(おざわ・たかお)/早稲田大学卒業後、1999年にEC関連会社を創業。楽天による子会社化・合併で同社に入社。プロ野球楽天イーグルスの立ち上げを担当し、2006年に退社。2012年ヤフー入社、2013年から現職(撮影:梅谷秀司)

たとえば、ヤフーショッピングでリュックサックを買いたいと思って検索する場合、検索結果の最初のページに表示されるのは、スマホでもPCでもせいぜい10項目くらいだが、ここにどの商品をどういう順番で並べるか。それに買い物データを活用しようという試みだ。

これは早速、めちゃくちゃ効果が出ている。そもそも、いつも数万円のものを買っている人、数千円のものを買っている人、すべてのユーザーに同じ検索結果を出すのはバカバカしい。同じキーワードに対しても全然志向が違う。商品数が増えれば増えるほど、この機能の重要性は増すだろう。

次はこの技術を、どう広告に生かすか。当社には買い物データ以外にも、その人が普段好んで読んでいるニュースなど、あらゆるデータが蓄積されており、それらをどういう配分で広告配信に活用するべきかを検討している。それができたとき、広告主が喜んで支払ってくれる広告単価がどれくらい上がるのか。未知数だが、ポテンシャルは高いと思っている。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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