石破の乱「成算なき孤独の闘い」が向かう先 「安倍改憲」に反旗だが党内は"石破包囲網"

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昨年8月の内閣改造で無役となった石破氏は、地方創生相としての経験を基に4月に『日本列島創生論』という著書を出版した。尊敬する恩師の故田中角栄元首相に自らを重ねての総裁選に向けた「政策提言」ともみえる。その中でアベノミクスの限界も指摘し、「地方が国家の希望だ」と力説する。

政治家の本は自慢話が多いのが常だが、この石破氏の著書は装丁も内容も極めて地味だ。出版を機に5月22日に日本記者クラブで会見した石破氏は控室で色紙に「着々寸進 洋々万里」と揮毫した。「苦手なんだよね」と苦笑しながらぎこちない筆遣いで書いた文字は、首相ら世襲政治家の達者な揮毫とは対照的だった。

「もり」と「かけ」でも1強は揺るがないのか

ここにきて、ネット上で「首相の地元の蕎麦屋のメニューから『もり』と『かけ』が消えた」とのブラックジョークが拡散している。「加計学園」や「森友学園」の疑惑が安倍政権の足元を揺さぶっているのは事実だ。そうした中、首相が悲願とする「在任中の改憲実現」に「待った」をかける石破氏。自民党や霞が関を覆う「物言えば唇寒し」の状況を改めようと孤軍奮闘しているようにも見える。

ただ、終盤国会でのいわゆる「共謀罪」法案や加計学園疑惑に絡む「前川の乱」などへの首相らの対応次第では、「党内の雰囲気も変わる」(石破氏周辺)可能性は否定できない。いわゆる2世議員なのに武骨で不器用な鳥取育ちの慶応ボーイの石破氏。「ポスト安倍」の1番手として1強首相に挑む「還暦の総裁候補」の言動からは当分、目が離せない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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