児童虐待の背景に「育児資源の不足」がある 家族の機能をもっと社会で担う必要がある
親は子どもの専門家
紫原 明子(以下、紫原):そもそも、小澤先生の勤務されている児童精神科には、どういった子どもたちが受診しにくるんでしょうか。
小澤 いぶき(以下、小澤):そうですね、学校に行かなくなった子や意欲が湧かない子、自分や他人を傷つけてしまう子など本人の困りごとも、願いもその子それぞれです。前回(児童精神科医が語る「親の愛情不足」への誤解)お話ししたように、子どもの情緒面の発達は、特定の大人とかかわりあってきたかどうかと深く関係しています。ですから、困難さの背景には、虐待や、不適切な養育を受けている子どもも少なくありません。また、そういった困難が1つだけでなく、たくさん積み重なっている場合もあります。
紫原:もしこの子は虐待されているな、ということがわかった場合には、具体的にどういう対応をされるんですか?
小澤:虐待の場合には児童相談所につなげます。また、医療ケアをしていくときに、まずは「来てくださってありがとうございます」というところから始めます。
紫原:ありがとうございます、ですか?
小澤:はい。児童精神科まで来るプロセスって誰にとっても大変なことですからね。医療に来てくれたお母さん、お子さんの力があったからこそ、ここから一緒にできることがあるんですよね。それに、私は確かに心の専門家ですが、その子どもの近くでいちばんその子のことを見ているという意味では、親御さんだからわかることもあるんです。お子さんがどんなことが好きで、どんな子で、どんな風な願いがあるのか、どうしていったらいいかを、お子さん、親御さんと一緒に考えましょうと、最初はそういう風にお話しします。
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