キャプテン翼が「Jリーグ」の危機を救った日 村井チェアマンが語る、Jリーグの今後(上)
――パフォームとは半年間の交渉を重ね、2016年7月に提携を発表した。全体の競技レベルを強化するには財政的に苦しい中、提案は渡りに船だったのか?
いろいろな葛藤があった。まずはこれまでのJリーグを支えてくれたのは紛れもなくスカパーだった。10年にわたってJ1、J2の全試合を中継して、一緒にJリーグを作ってきた。そうしたパートナーとの関係性をどうするのかとの思いも去来した。
中継に関して、今後はネット配信が主戦場になるのでは、ということは2015年ぐらいから考えていた。
ただ、ネット配信のモデルは当時、音楽や動画のサービスはあったが、ライブ中心のサービスはあまりなかったし、スポーツ中心のサービスもなかった。それから、ドメスティックなJリーグの組織が海外100カ国で展開するようなパフォームとやっていけるかという、国際感覚や商習慣についての葛藤もあった。
巨額の放映権収入はもちろん獲得したいが、本当に長期的に継続してもらえるのか。外資企業の場合、逃げるときは早いといった話もあったりする。だから、渡りに船というほど簡単ではなかった。
契約の決め手は、反動蹴速迅砲だった!?
――それでは何が後押ししたのか?
ただ、いくつか確信めいたものもあった。2014年、ユーチューブのJリーグ公式チャンネルで、川崎フロンターレの中村憲剛選手と大久保嘉人選手(現在はFC東京)が『キャプテン翼』に登場する必殺技「反動蹴速迅砲(はんどうしゅうそくじんほう)」を再現した動画をアップした。これが1カ月で400万回も再生された。
サッカーの話題はピッチ上でなくても価値があるし、ネットを活用すると破壊的なインパクトをもたらすということがわかった。こうした現象が背中を押した面もあった。
また私自身、サッカーが大好きで、いろいろ録画していた。友達に「結果を言わないで」と言って、電車でもスポーツ新聞の見出しが目に入らないようにして家に帰ってビデオを見るということが何度もあった。それが、スマホでもタブレットでも、ライブでも見逃し配信でも、90分でもダイジェストでも、電車の中でも会議中でもみられる(笑)。これはすごくポテンシャルがある。しかも世界のどのリーグもまだやっていない。武者震いする思いもあった。
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