小池百合子都知事は一体何を目指すのか 都議選乗り越えたその先に

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小池氏自身はそうした見方を一蹴、「私は今、東京都をどうするか、この一点に集中している」と語る。

2007年、防衛相に就任した小池氏は、当時の守屋武昌事務次官と対立し、次官を更迭した。その後、守屋元次官は汚職事件で収賄罪に問われた。

都知事選で一貫して小池氏を応援した自民党の若狭勝衆院議員は、ロイターの取材で「次官を更迭した時は男社会から批判されたが、守屋氏が有罪になり、小池氏には見極める力があったことが明らかになった。彼女は男ではできないことをやった」と語った。

地方の古い自民勢力への挑戦

2008年、小池氏は2002年に入党した自民党の総裁選に女性として初めて立候補。結果は5人の候補者中3位だった。

そして2016年の都知事選、小池氏は自民党の了承を得ずに立候補し、自民党を激怒させた。しかし、結果は小池氏が自民推薦の増田寛也候補に圧勝。初の女性都知事が誕生した。

小池氏の政治手法は、2003年に環境相として仕えた当時の小泉純一郎首相と似ているとの見方がある。

自民党の地方の古い勢力を改革への抵抗勢力として批判するやり方だ。しかし、安倍晋三首相に対する表立った批判は避けている。

インタビューでは、自民党東京都連について「改革のスピードを後ろに戻す力はあっても、前に押し出す力はない。私はそのことを知っているがゆえに、そこに挑戦している」と語った。

小池氏にはアピールする力はあるが、結果を出せるかどうかは疑問、との声もある。自民党都連会長で党幹事長代理の下村博文衆院議員は、ロイターに対し「小池氏の発信力は素晴らしい。それは見習うべき」としながらも「政治は劇場型で成り立つものではない」とつけ加えた。

築地市場の豊洲移転問題でも、小池知事は従来の政治勢力に挑む。一度は決まった豊洲への移転を都知事が覆す可能性は、十分あるとみられている。

東京オリンピック・パラリンピックの経費削減、負担問題では、オリンピック組織委員会会長の森喜朗元総理との対立を隠さない。

小池氏の総理大臣への道は険しく、遠いことは多くの人が認めるだろう。

しかし、安倍首相の任期が終わる2021年に、小池氏が衆院選で国政に復帰し、トップに上り詰めるというシナリオを描く者もいる。

自民党の船田元衆院議員は「政治的な祭りでもあるオリンピックを成功させたということで、小池氏が点数を上げれば、安倍首相はレームダックとなり、ライジングサンは小池氏だろう。(このシナリオは)十分あり得ると思う」と述べた。

(Linda Sieg 翻訳:宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

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