首都圏の鉄道、「廃線跡」の知られざる活用法 「細長い土地」はこうして地域住民に愛された

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「一之宮緑道」は線路が残された遊歩道として、今後のPR・活用の仕方によっては大きな観光資源になりうるかもしれないが、課題もある。

一之宮緑道Bブロックに残された線路。枕木は朽ち始めている(筆者撮影)

まず、この場所に立つと、いつ列車が警笛を鳴らしながらやってきてもおかしくないようにも思えるが、よく見ると、所々、枕木の腐食が進んでいる。しかし、緑道を管理する町では、危険な箇所が生じれば修繕はするが、全体的な補修の計画は今のところないという。

また、今のところ「一之宮緑道」は、あまり積極的にPRされていないこともあり、知名度が低いのも課題といえよう。もし、このような場所があることを知れば、珍しさもあり、訪れてみたいと思う人は、相当数いるのではないか。

さらに、今後、たとえば一之宮公園内に廃車になった気動車を一両でも設置したり、寒川駅や公園管理棟などで列車が走っていた当時の写真をパネル展示したりすれば観光資源としての価値が、一層高まるのではないかと思うが、どうだろうか。

ちなみに、廃線跡に車両が設置されている例としては、かつての東武熊谷線の妻沼駅跡地付近の「熊谷市立妻沼展示館」敷地内に、当時の車両が静態保存されており、職員に声を掛ければ、車内を見学することができるようになっている例もある。

渋谷に出現した廃線跡

次に訪れたのは、東急東横線の代官山駅だ。このような都内の一等地に廃線跡があると聞くと不思議に思うかもしれないが、東京メトロ副都心線との相互乗り入れに伴い地下化された渋谷―代官山間の地上部分が、廃線跡になったのだ。

このうち、今回、主に取材したのは、代官山駅北口から渋谷駅方面に200メートルほどの、東横線が地下に潜り込む開口部のすぐ近くに、2015年4月17日にオープンした商業施設「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」だ。

全長約220メートル、敷地面積約3200平方メートルという空間に、散策路が整備され、それに沿うように5棟のスタイリッシュでコテージライクな店舗建物が立ち並び、クラフトビールが楽しめるブルワリー(小規模なビール醸造所)併設のダイニングや、最先端のファッションアイテムがそろうセレクトショップなどが出店している。

土止めには枕木の廃材が利用されている(筆者撮影)

現地を訪れると、一見、かつてその場所に鉄道が走っていた痕跡は残っていないように思うが、施設サインや土止めなどには、枕木などの廃材を使用している。

また、ログロード代官山のロゴは、12本の線路をモチーフとしており、これは線路跡地であることを表現するとともに、1年=12ヵ月を通じて、いつ来ても新たな発見や刺激のある場所であってほしいという思いが込められているという。

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