英国テロでわかったイスラム国の「弱体化」 政治的影響力は確実に低下している

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マンチェスターのコンサート会場で起きた自爆テロでは、多数の犠牲者が出た(写真:Stefan Wermuth/ロイター)

22日(日本時間23日)に、マンチェスターで22人の死者を出した自爆テロに対し、イスラム国(IS)が素早く犯行声明を出したのは、驚くべきことではない。

イラク2番目の都市モスルにおけるIS最後の支配地域が、米国の支援を受けたイラク軍により陥落され、シリアの首都であるラッカも包囲されている現状において、ISはますますその正当性を示そうと必死になっている。欧米諸国への攻撃は、残された数少ない選択肢の1つなのだ。

ISが得られる政治的「見返り」は減少

ISは今回の自爆テロについて、「十字軍」に対する復讐であると主張しているが、米国も英国も今回の犯行がISによるものだとは断定していない。

真実がどうであれ、ISは別の、おそらくより深刻な問題に直面している。欧州各地への攻撃は恐ろしいものかもしれないが、ISが得られる政治的な「見返り」は減少しつつある。

ISは残虐な攻撃を行うことで部隊を強化し、先住民と近年のイスラム教徒移住民との間に割り込んで、両者の関係を引き裂こうとしている。そうすることで、過激な中東の帝国だけがイスラム教徒を保護でき、自国地域での戦闘や外国での攻撃を実行するよう新兵を突き動かすことができる、というISの議論を支えているのだろう。しかし、そうはなっていないように見える。

欧州での出来事は、ISがその社会を分断させるという使命に失敗していることを示唆する。2015年1月以来、フランスはほかのどの欧米諸国よりも頻繁に、より激しい攻撃をイスラム過激派から受けるようになった。しかしながら、5月前半に行われた選挙では、投票した人の過半数が、反イスラムを強く訴えるマリーヌ・ルペン氏の国民戦線を拒否し、中道派のエマニュエル・マクロン氏を選んだ。

1回目の投票のわずか4日前に、パリ中心部のシャンゼリゼで1人の警官が殺害され、これがイスラム教過激派の犯行とみられていたにもかかわらず、ルペン氏は選ばれなかったのである。攻撃が極右勢力の得票を押し上げるかもしれないという懸念があったが、そのような投票行動となった形跡は見られなかった。

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