チャンギをも越える急膨張するアラブの巨艦

《対決!世界の大空港2》ドバイ 

7月上旬の中部国際空港(愛知県)。午後7時半、エミレーツ航空のチェックインカウンター前には、出発3時間以上前にもかかわらず80人近い人が並んでいた。その半分近くがポルトガル語を大声で話す若者やカップル、家族連れなどの日系ブラジル人。空港はレストランや売店が午後9時で閉店すると閑散とした雰囲気になるが、ドバイ便のカウンターがある一角だけは喧噪の人だかりという、一種異様な光景が毎日繰り広げられている。

この中部-ドバイ便では日本人以上に日系ブラジル人が存在感を増している。日本からブラジルに帰省するブラジル人の利用が増え、人気が急上昇しているのだ。

状況が一変したのは、昨年10月。ドバイ-サンパウロ便が就航したことで、中部とサンパウロがドバイを経由してつながったからだ。日系ブラジル人の多くは、これまで北米経由の便で帰省していたが、同時多発テロ以降、米国を経由するだけでも入国ビザを求められるようになった。米国経由のルートは利用者が激減。名古屋空港(小牧)と成田空港に乗り入れていたヴァリグ・ブラジル航空は日本便の撤退へと追い込まれてしまった。

その後、日系ブラジル人の間ではカナダなど、米国を経由しないルートが好まれるようになったが、そこに登場したのが、エミレーツのドバイ-サンパウロ便。「ドバイ乗り換えならビザも不要で気分的にもラク」という声が口コミで広がり、中部空港には日系ブラジル人が大挙して押し寄せるようになった。「エコノミー席はほぼ100%」(エミレーツの中村勝美日本支社長)というエミレーツの高い搭乗率の理由の一つには、こうした日系ブラジル人の存在がある。

航空ダイヤに隠された大胆なトランジット戦略

2002年に関西、06年には中部に乗り入れたエミレーツ航空だが、念願の成田発着便は発着枠の空きがなく就航できなかった。そのため、日本航空の機材を使って羽田-関西間の共同運航便を飛ばしたり、ファースト・ビジネスクラス利用者には東京から名古屋までの新幹線チケットを提供するなど、首都圏の旅客取り込みに腐心してきた。

近年はドバイもリゾート地、観光地として注目されるようになってきた。が、いくら観光地としてドバイの知名度が上がったといっても、関空と中部合わせて毎日500以上もの席を埋めて飛ぶのは容易ではないはずだ。

それなのに、エミレーツが高搭乗率を維持できているのはなぜか。秘密は、ドバイの地の利を生かした大胆なトランジット戦略にある。

それはエミレーツのフライトスケジュールを見れば一目瞭然だ。日本やアジア、オセアニアを出発する便は午前4~5時台にドバイに到着するケースが圧倒的に多い。ドバイ到着を早朝の同じような時間にそろえているため、日本、韓国、中国などの出発は深夜。これが東南アジアだと日付が変わった深夜となり、オセアニアからの便は長距離を飛ぶため夕方の出発となる。

反対にドバイ発の乗り継ぎ便を見ると、カサブランカ行きが7時35分、テヘラン行きが7時45分、ロンドン行きが7時45分、チュニス行きが9時と、中東、欧州、アフリカ方面行きの出発時刻を午前の早い時間帯に設定している。これは、「最終目的地に昼間に着けるよう、深夜から早朝にかけてトランジットするスケジュールを組んでいる」(中村支社長)ためだ。

夜間~早朝にかけてドバイに人を運び込み、そして、昼の到着を目指して世界各地へと乗り継ぎ便を飛ばす--。エミレーツの航空ダイヤには、ドバイをハブ空港とする同社の戦略が象徴的に表れている。

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