電車の混雑率測定方法には大きな問題がある 定員増やすために座席数を減らしている現実

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ラッシュ時の混雑率は、調査方法と算定基準となる旅客定員数の両面でいくつかの問題を抱えている(写真:M&K/PIXTA)

2月24日、東京都の小池百合子知事は定例記者会見で「快適通勤ムーブメント」の実施を発表した。今夏の一定期間、通勤混雑を緩和するために、時差通勤、フレックスタイム、テレワークなどの導入を企業に働きかけるというもので、鉄道会社にもポイント付与や景品などで時差通勤の誘導策による混雑緩和を期待するという。

国は、1992年6月19日運輸政策審議会(鉄道部会)第13号答申を受けて、「各都市圏の都市鉄道のラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として150%程度にすること。ただし、東京圏の場合には、今後おおむね10年程度でラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として180%程度にすること」を政策目標として掲げた。それから四半世紀を経た現在、名古屋周辺や近畿圏ではすでにこの目標を達成しているものの、東京周辺では暫定目標の混雑率180%も達成できていない路線が多い。

混雑率の算定方法

そもそもラッシュ時の混雑率は、調査方法と算定基準となる旅客定員数の両面でいくつかの問題を抱えている。

混雑率の測定には、電車の応荷重装置(荷重の増減にかかわらず加速度や減速度を一定にするための装置)を利用する、線路のひずみゲージ(線路のひずみを測定するセンサー)により自動的に測定するといった技術があるが、設備の普及率が低いために全路線を統一基準で測定できないという問題がある。加えて、従来のデータとの比較ができなくなるという大きな問題がある。

そこで、多くの鉄道会社では調査日に調査員を配置して、目視により混雑率を測定している。熟練者なら正確な測定が可能になるとはいえ、測定員による差異もあり、また短時間に各車両の混雑状況を目測しなければならないなど、客観的で正確なデータとはいえない。

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