高島屋「新免税店」が爆買い減でも強気の理由 ブランド物よりもコスメ・家電を目玉に

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一方、銀座で先行した免税店は大苦戦を強いられている。爆買いの勢いの中、高級品中心の品ぞろえにしたためだ。4月の平日、2016年1月に鳴り物入りで開業した銀座三越8階にある「Japan Duty Free GINZA」を訪れると、客はまばらで片手で数える程度だった。海外有名ブランドの時計やバッグなど高額品が売り場の半分近くを占めるが、利用客は当初想定の半分にも満たない。

銀座の免税店は爆買い需要を見誤った

「Japan Duty Free GINZA」は銀座三越の8階に店舗を構えている(記者撮影)

「銀座三越の1階や地下の集客は十分にある。8階の免税店フロアにまで客に来てもらうことができなかった。明らかな周知不足だ。日本人の利用も進まなかった」と運営主体の日本空港ビルデングは説明する。

同社は羽田や成田で空港免税店を展開しているが、そのノウハウを生かせなかった。訪日客の需要の変化を見誤ったこと、団体客の確保に失敗したことなどが不振の要因といえる。

高島屋免税店は年間80万人の来訪客数を想定し、先述のとおり初年度は80億円の売り上げを見込む。初年度は設備投資がかさむため約6億円の営業赤字となるが、2年目以降に黒字化、2020年には売上高150億円を目指す。「この免税店で80億円は無理な数字ではない。中国人などの訪日客の動向を見て、商品構成を見直し十分に検討した数字」(木本社長)と自信を見せる。

訪日客需要の変化をとらえ、コスメ中心の商品展開に賭けた高島屋免税店。この1年間だけでも高額品が勢いを失い、消費の中心が「モノ」から体験などの「コト」に移るなど、需要は劇的に変わった。その需要の変化に柔軟に対応し商品構成を変えていくことが、空港型市中免税店の成功のカギといえそうだ。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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