「働き方改革」のズレまくりな議論にモノ申す 誰のために何のためにやっているのか

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常見:2つ目は日本的雇用の問題。労働政策研究・研修機構主席統括研究員の濱口桂一郎氏が論じるように、日本的雇用は「空白の石版」モデルで、業務内容が明確ではなく、それもどんどん書き換えられていきます。次から次へと仕事が変わり、増えていきます。これもまた労働時間の増加を誘発している。

労働生産性とは何か?――補足として

常見:ここまでの議論を踏まえ、僕からもひとつ補足したいことがあります。それは「労働生産性」という言葉の勘違いです。この手の議論をする際に、よく「日本の労働生産性は低い」「だから変わらなくてはならない」という話になります。

その理由として「労働生産性が悪いのは労働者が効率的に働いていないから」と思っている方が多いのではないでしょうか。しかし、これは大きな間違いです。労働生産性とは生み出した付加価値を労働投入量で割ったものです。儲からない産業で働いていれば、個人がいかに頑張っても労働生産性の上昇は微々たるものです。産業構造、人口などが関係します。労働者が勤勉か、無駄がないかどうかだけでなく、効率化のためにたとえばITに投資しているのかどうかなどが問われます。

おおた:時間当たりの労働生産性で上位に入っているノルウェーには油田があります。何もしなくても油を売れば儲かるわけです。日本からは掘っても温泉しか出てこない(笑)。どんぐりが落ちている国と、宝石が落ちている国では、同じ作業をしていても、自分の生活を成り立たせる労働時間は違うわけです。暴論を言うと、リーズナブルでおいしい料理を出す居酒屋よりも、ぼったくりバーのほうが労働生産性は高い。

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