笑うソフトバンク、ネット企業決算の明暗 ガンホー躍進、ヤフー堅調。その他企業は元気がない

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ネイティブアプリに商機

一方で暗転している企業も目立つ。中でもソーシャルゲームで一世を風靡したグリー、ディー・エヌ・エー(DeNA)は、半年以上前から業績がピークアウトしている。従来型携帯電話を主体にしたモデルがスマホの普及により、崩壊しかけているからだ。スマホはアップルの「アップストア」、グーグル「グーグルプレイ」からアプリを直接インストールするだけでよく、グリー、DeNAが運営するブラウザ(閲覧ソフト)型のプラットフォームを通す必要がない。この種類のサービスはネイティブアプリと呼ばれネット系各社は「ソーシャルゲームに続く有望市場」と見据えている。

調査会社のアップアーニーによると、13年5月のアップストアとグーグルプレイを合わせたネイティブアプリの世界売上高は前年同月比2倍超に成長した。日本でも、現在5000億~6000億円あるソーシャルゲーム市場の規模を、ネイティブアプリが抜くのは時間の問題だ。 

一足早くネイティブアプリに舵を切ったコロプラは、「魔法使いと黒猫のウィズ」などが好調。時価総額1606億円(8月1日終値)はグリーに肉薄する水準だ。コロプラの馬場功淳社長は「ネイティブアプリ市場の成長は想定を超えている。まさにビッグバン現象」と驚きを隠さない。

かといって、ネイティブアプリにシフトすればバラ色かというと、そうではない。KLabは新作ゲームの投入遅延などにより、13年12月期決算は赤字に転落する見通し。すでに資金繰りが危ぶまれ、7月に2回の増資を決議しているが(実施は8月)、財務面の懸念が払拭できたわけではない。

ネット企業の古株、サイバーエージェントも苦戦中だ。12年6月にグリーとDeNAに追随し、自社のプラットフォーム「アメーバスマホ」を開始したが、広告宣伝費が先行し13年9月期の同部門は80億円の営業赤字を計上する見通しだ。

同社は並行してネイティブアプリも展開。現在合計18タイトルを開発し、中でもパズドラを模した「三国志パズル大戦」というタイトルに命運を託す。「(三国志パズル大戦は)確かにパズドラに似ているが、ここまでクオリティ高く似せているタイトルはほかにはない」(藤田晋社長)となりふり構わない様子だ。

同じ古株の楽天は、業績が比較的安定しており、株価も好調に推移している。同社の足元を支えているのは金融事業。楽天証券の4~6月期決算は営業利益が前年同期比8倍の73億円となった。心配なのは、主柱のネット通販事業の伸びが緩やかなこと。注力中の海外では、12年12月期に米英の通販子会社に関する特別損失を255億円計上するなど苦戦している。長らく楽天はヤフーと並ぶ日本のネット企業の2トップと見られてきたが、相対的な地位低下は否めない。

ソフトバンクグループの独り勝ちが鮮明になったネット決算。この牙城を崩す新旗手は現れるか。

(週刊東洋経済2013年8月10日号)

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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