藤田観光は、なぜ「小涌園」を再開発するのか 創業地「箱根」から始まるリゾート事業の攻勢

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藤田観光はホテル小涌園の開業で、富裕層の別荘地だった箱根に一般の所得層を呼び込むことに成功。高度経済成長期には団体顧客が増加し、多くの宿泊客で賑わった。

ただ、ホテル小涌園も開業から半世紀以上が経ち、老朽化が進んでいる。ホテル業界では建物を半世紀近くに渡って使用することは多いが、その間、消費者のニーズはめまぐるしく変化する。スタッフの導線が悪かったり、宴会場が必要以上に大きかったり、耐震が不十分だったりといった課題もあり、施設、空調の維持や更新費用は年々かさんでいった。

一方、バブル崩壊以降はデフレが長引いたことで、値上げして十分な収益を確保することができなかった。同社は小涌園の宿泊事業が伸び悩む中、2001年に日帰り温浴施設ユネッサンを開業して、日帰り客を呼び込みしのいできた。

このまま守勢に回っていてはいけないーー。藤田観光はついに小涌園の再開発を決意した。その第1弾が、ユネッサンに隣接していた宿泊施設を閉鎖し、跡地に総工費115億円を投じて建設した天悠だ。

ホテル小涌園も再開発へ

天悠は地下1階、地上9階建てで全150室に露天風呂を備えた最新施設だ。レストランは1軒のみで、宴会場はない。大型バスの車寄せも置かず、完全に個人客の取り込みを重視した作りになっている。

天悠に続いて、今後はより高単価な旅館「蓬莱園(ほうらいえん)」のオープンを予定。そしてホテル小涌園も2018年1月に営業を終了し、新たな開発を検討する。

リゾート事業では箱根エリア以外での事業拡大も見据える。大分県の別府温泉には、2014年から展開している「緑涌(りょくゆう)」があるが、将来的に各地の有名温泉地に展開を広げる予定だ。

ホテルとしては「椿山荘東京」は後発の部類に入る。ブランド力を生かした拡大戦略は2020年以降の中期経営計画の目玉となりそうだ(撮影:今井康一)

残る課題は、椿山荘や「太閤園」といった高級ホテルや宴会場、結婚式などラグジュアリー&バンケット事業だ。

かつては、椿山荘と太閤園の婚礼・宴会施設は利幅が厚く、バンケット分野だけで20億円以上の利益を稼いだ時代もあった。その稼ぎ頭の婚礼や宴会を襲ったのが、結婚式場の専門業者の台頭や、婚礼件数の減少、法人宴会の減少だ。

特に婚礼はかつて300人も参加する大型案件がザラだったが、規模が縮小し、巨大な宴会場の運営が難しくなっている。現在は宿泊分野もあわせて数億円の利益をあげるのがやっとという状況まで落ち込んでいる。

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