育児で「子どもに泣かれる」夫に欠けた視点 即席で「イクメン」になることはできない!

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浜屋:先生の「チーム」も相当に大変な時期を乗り越えて進化してこられたのですね。

ところで、共働き育児の場合は、子どもがひとり増えるごとにこれがやり直しになるんでしょうね。

中原:やり直しですね。しかし、時間はかかるかもしれませんが、ふたりとも役割や行動規範を学んでいき、次第に、やらなければならないことがオペレーションに落ちてきます。チーム(組織)が、徐々にスマートな振る舞いを見せるようになることを、専門用語では「組織学習」と言ったりします。そうすれば、次第にやるべきことも自動化されてくる。毎日のルーチンが決まり、急な発熱などのリスク対応もできて、楽になってきます。夫婦ふたりで「組織学習」をしているのですね。

共働きのチーム形成には、12カ月はかかる

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浜屋:チームが機能期に入って自動化されるまでの期間は、早くて1年くらいでしょうか。

中原:そうですね。わが家を振り返ってみると、4月に妻の職場復帰とともに、第2子という新メンバーが加わった共働きチームが形成され、5月あたりには混乱期を迎えました。ゴールデンウイーク明けがつらいんですよね。「保育園行きたくなーい!」となって、すぐに熱を出すようになってくる。保育園の送り迎えの間にバタバタと仕事をこなして、いろんなことが制御不能になり、もう自分がなにをやっているのかわからなくなってくる。その時期は僕も混乱していました。春から夏にかけてはずっと嵐の時期で、夏休み明けあたりからちょっと楽になってきて、「ああ、もうなんかいけるかも」と思ったところで、インフルエンザの季節に突入すると……。

浜屋:インフルエンザにノロウイルス。油断したところに伏兵のロタウイルス! 冬を越すというのが、もうひとつの山ですよね。

中原:インフルエンザに、ロタ、ノロ。あいつらは、僕ら夫婦を「試して」いる。

浜屋:夫婦の「チームの強さ」を試しているわけですね。乗り越えてみよ! と。

中原:なかなかハードなタックルですね。インフル、ロタ、ノロは。

浜屋:やはり共働き育児のチーム形成には、12カ月はかかりそうですね。長い混乱期の中で、少しずつ、いろんな規範をつくっていく。

浜屋 祐子 研究者

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はまや ゆうこ / Yuko Hamaya

国際基督教大学教養学部卒業後、企業勤務を経て、東京大学大学院修士課程修了(学際情報学)。現在は経営教育事業に携わるとともに、はたらく大人の学びに関する研究を続けている。著書に『アクティブトランジション働くためのウォーミングアップ』(共著、三省堂)、『人材開発研究大全』(共著、東京大学出版会)がある。

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中原 淳 立教大学経営学部教授

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なかはら じゅん / Jun Nakahara

1975年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人々の学習・成長・コミュニケーションについて研究。立教大学経営学部教授。同大学ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、リーダーシップ研究所副所長。著書に、『経営学習論』(東京大学出版会)、『会社の中はジレンマだらけ』『育児は仕事の役に立つ』(ともに共著、光文社新書)など多数。

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