育児で「子どもに泣かれる」夫に欠けた視点 即席で「イクメン」になることはできない!

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中原:パパデーに頑張りすぎると続かないと思います。コツは「頑張らない」です。頑張らないと決めてからは、ずいぶん気分が楽になりました。妻もいないしね。適当な食事ですけれども、いろいろ妻からお小言を言われることもありませんし。

浜屋:ああ、ダメ出しもない、と。

価値観の違いがあっても、「ま、いっか」と受け止める

中原:妻から見ると、どうしても家事に対する要求水準が高くなりがちですからね。先日も「お皿洗いを手伝うよ」と言ったら、「あなたは鍋までちゃんと洗ってくれないから、わたしがやる」と。おっしゃるとおりなんですけれどね。なかなか鍋を洗うのがうまくならないな、僕は……。

浜屋:たしかに、食事の支度や片づけといった一つひとつのタスクについて、夫婦が持っている基準って異なりますよね。「夕食は一汁三菜がアタリマエ」とか、「お皿洗いはシンクをピカピカにするところまでがセット」とか。子どもに関することも同様に。

チーム育児を進めていくうえでは、そうした、それぞれが育った環境で身に付けた規範や価値観を相手に押しつけることはできませんからね。お互いの価値観をすり合わせて、それぞれが納得できる妥協点を見つけなくてはならない……。モノによって価値観の違いがあったとしても、それを「ま、いっか」と受けとめることも含めて。

中原:やってみてけんかをしつつ、けんかをしつつ育児をしてみて、次第に「落としどころ」を見いだしてきている気がします。

浜屋:それぞれの両親をロールモデルに、そのまま再現しようとするといろいろしんどくなりますが、夫婦、いえ家族をひとつのチームととらえたら、違った見え方がしてくると思います。チームについては、人文社会科学のさまざまな研究知見がありますしね。

中原:チームづくりについては、タックマンによるチーム形成モデルが最も参考にされることが多いのではないでしょうか。これは実証的に検証されたモデルではないとは思いますが、経営やビジネスの文脈では最もよく語られます。

タックマンはチーム形成の段階を形成期(forming)→混乱期(storming)→統一期(norming)→機能期(performing)という4段階に分けています。

最初は形成期でチームのメンバーが集められた段階。目的を確認し、同じ目的を達成するために一緒にやっていきましょう、というところです。

次に混乱期、いわゆる「嵐」が来ます。目的、役割、責任などについて認識のずれや価値観の違いがあらわになって混乱します。第1章でもお話ししましたが、僕は第2子が生まれて、妻が職場復帰した直後の頃、妻に「死にたい」ともらしました。そのくらい分単位のスケジュールを綱渡りしていたのです。振り返ってみると、あの頃はまさに混乱期だったんですよね。

さて、そのあとは、統一期です。行動規範ができてきて、各自の役割も決まり、スムーズに回るようになってくる。

最後は機能期。チームに一体感が生まれ、目的達成に向かう。わが家のチーム育児も次第に楽になっていきましたね。

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