日本株はこれからズルズル下がり続けるのか 「プチ円高」から「本格的円高」につながるか

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しかし、直近のマーケットは「ドル高円安で日本株も好調」とはなっていない。4月6日の日経平均株価は、今年1月から続いていたモミ合いの下値(1万8650円)を割り込み、一時300円を超す気崩れ的下げになった。FOMC(米連邦公開市場委員会)の3月の議事要旨で、大半の参加者が過去の量的緩和で膨らんだ4兆5000億ドルもの保有資産の縮小を「年内に開始するのが適切である」と考えていたことが判明したからだ。保有資産の縮小は「量的引き締め政策」(QT)になる。

通常、量的引き締めは、過熱経済を金利で抑えきれなくなった時に使われる政策のはずだ。量的緩和で中央銀行のバランスシートは膨らみ、引き締めで縮小するのは当然のことだ。政策によって変化する中央銀行のバランスシートが、経営リスクという「民間銀行的発想」で議論されるのは不適当、と筆者は考える。

市場でも「今後数回の利上げの後、早くても保有資産の縮小は2018年から始まり5年ほどかけて、極めてゆっくり正常化する」との見方が多かった。そのため「年内開始説」は「ミニショック的な下げ」につながった。目先の注目は、NY連銀のダドリー総裁が「あり得ない」と言っていた住宅担保証券(MBS)の再投資停止だ。金利上昇が「不十分」(景気が熱くならない)なうちに、「中央銀行のリスク解消」という別次元の引き締めが開始されると、そこでおそらく金利上昇は止まり、ドル高円安シナリオは大きく修正せざるを得なくなる。

1ドル=110円を割らなかったことは驚き

中期的な見方はさておき、「ミニショック後」の7日の日本株はどうなったか。日経平均の揉み合いの下値を切った気崩れ的な下げで、筆者が重視している「総合かい離」(25、75、200日移動平均の合計かい離)がマイナスに転落した。また「空売り比率」は45.2%(筆者手元の2014年10月からの集計では最高)と、「売り方」の攻勢がかかる中で迎えた7日の日本市場は、米軍のシリア空爆という地政学的リスクも加わり、かなり緊張した1日になった。

しかし結果は、日経平均株価では前日比67円のプラスで終えることができた。なによりこの状況で、為替が1ドル=110円を割らなかったことはある意味、筆者には驚きだった。

ダドリーNY連銀総裁の話などが原因とされるが、金利上昇が制限される、FRBのバランスシート早期縮小の話が出ている中、リスク回避で円高に振れやすいタイミングでの110円維持は、円高におびえる投資家の気持ちをかなり和らげたと思う。

またテクニカル面で見ても「騰落レシオ(値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割ったもの、25日移動)が一般的に「買いゾーン」と言われる80%割れとなり、同じくRSI(14日間の上昇幅と下落幅の合計に対する上昇幅の割合)もやはり「売られ過ぎ」の水準とされる約30%となり、値ごろ感も出ている。

チャート面からみると、昨年12月からの「上値しこり」ができたため、当面の急激な上値トライは難しい状況だろう。だが、筆者は意外に底堅い1週間になると思っている。今週(10日~14日)の日経平均予想レンジは1万8500円―1万9000円とする。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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