シリア化学兵器攻撃で突入した無秩序な世界

化学兵器禁止条約は無意味なのか

4日、ハンシャイフンでガス攻撃にあった9歳の少年(写真:Abaca/アフロ)

シリアの都市ハンシャイフン近郊で4日に起きた毒ガスによると見られる攻撃での死者はこれまでのところ70人に上っているが、何十万人もの死者が出ている戦争と比べれば、たいしたことがないように見えるかもしれない。

しかし、化学兵器の使用はそういうこととは関係ない。1世紀以上前、第1次世界大戦の最中に欧州諸国の一部が初めて使用して以来、その物理的、あるいは、軍事的効果とは関係なく、多くの面で心理的かつ政治的な衝撃を世界に与えてきた。生物兵器同様、化学兵器は人々に大きな恐怖感を抱かせる。

化学兵器禁止条約には192カ国が署名

多くの医師によると、第1次世界大戦時、ガス攻撃への恐怖は、大砲や爆弾に対するものを大きく上回った。後者のほうがより多くの人を殺したにもかかわらずだ。戦争の終結時までには、基本的なガスマスクと化学防護装備が、多くの兵士がその戦闘を比較的無傷で生き延びられる事態を意味した。

こうした恐怖感が、大部分の国家での化学兵器の使用を禁止するきっかけとなった。1993年に作られた化学兵器禁止条約には、現在までに192カ国が署名しており、かつて世界に存在していた化学兵器保有量の90%以上が昨年末までに破棄されたと信じられている。

しかし、再び始まっているらしいシリア内戦において、政府が自国民に対して化学兵器を使っている現状を見ると、こうした兵器は自由に使えるようになったのではないかとすら思えてくる。

米国のレックス・ティラーソン国務長官と、ジェームズ・マティス国防長官を含む米国高官がこの数週間に、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領の排除はもはや優先事項ではないと示唆したことを受けてシリア政府は、国内の「敵」には何をしても免除されると判断したようだ。この事態は、大量破壊兵器に関する世界のルールが侵され始めていることや、世界における米国の存在感が低下していることを意味している。一方、依然政府と戦っているシリア人は、これ以上の抵抗がどのような代償を伴うのかを見せつけられた格好だ。

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