スペインの名酒「シェリー」を知っていますか 日本でもスペイン風「バル」などで楽しめる!

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輸出市場としていちばん重要なのが英国だ。12世紀には輸出が開始されていたが、この時に英国人がシェリーと呼ぶようになった。16世紀にはウイスキーと並ぶほどの人気で、英国人が3000樽をヘレスから強奪する出来事もあったという。あのウィリアム・シェークスピアもシェリーの愛飲家であった。

シェリーの安定的な需要拡大を見込んだ英国人やアイルランド人は、19世紀にシェリーの生産に本格的に乗り出す為にヘレスに進出することを決めた。英国やアイルランドの生産者たちがヘレスに本拠地を構えるようになり、今に至るまでシェリー造りを続けている。

日本は「シェリー」の有望市場だ

もちろん、地元の生産業者も輸出に精を出している。たとえば、セサル・フロリド社(Cesar Florido)は1887年に創業して、現在もセビーリャの春祭りでの販売と英国への輸出を柱にして輸出事業を発展させている。特に米国には英国人やラテン系が多く、これからも成長が期待できる市場だと見られている。同社が特に得意とするのは、シェリーのうちモスカテルで、生産業者として数々の賞を獲得している。

世界的にシェリー生産業者として著名なティオ・ペペ(Tio Pepe)に限っては、日本でもそれなりの知名度を得ている。同社の創業は1835年。世界的に知名度が高い銘柄なのは、英国人を早くから共同経営者として参加させて、早い時期から輸出市場を開拓していったからである。

最近、日本でもスペイン・バルなどスペイン料理を提供する店がだいぶ一般的になってきた。シェリーも少しずつ需要が伸びているようだが、世界全体から見ると消費量はまだわずかだと言っていい。

ただ、シェリー生産業者が存続するには輸出をさらに伸ばす道しかない。そう考えたときに、中国や日本は彼らにとって期待の大きい市場であることは、間違いない。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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