スペインの名酒「シェリー」を知っていますか 日本でもスペイン風「バル」などで楽しめる!

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フィノとマンサニーリャはパロミノという品種の白ブドウを原材料に使うので、とても良く似ている。その違いとして挙げられるのは、マンサニーリャはサンルカル市でしか生産されていないということだ。大西洋の河口に近いサンルカル市の気候や土壌の影響で、スカッと軽い感じが特長と言われ、「潮の香りがする」と表現されることもある。

10年くらい前まではフィノが1番人気だったが、最近はマンサニーリャのほうが若者の間で人気があるらしい。特に、マンサニーリャを炭酸飲料の「7UP(セブンアップ)」で割って飲むのが流行している。

フィノもマンサニーリャもアルコール度数は15~17度程度。醸造過程でアルコールを添加することで、アルコール度数を高めた「酒精強化ワイン」である。この2種類以外にアルコール度数が22度に至るオロロッソ、アモンティリャード、モスカテルなど、シェリーには全部で6~8種類ある。

他のワインと違う「シェリー」の熟成法

シェリーの熟成法は独特だ。「ソレラシステム」という手法で、3~4段に樽を積んで、いちばん下の樽から製品にして出荷する古い酒を取り出し、足りなくなった分はその1つ上の樽から新しい酒を補充する。つねに古い酒と新しい酒を混ぜ合わせる造り方なので、一般的にシェリーにはビンテージワインや熟成年数といった考え方が存在しない。

どんな食事に合うのかというと、フィノとマンサニーリャは酢酸の含まれる度合いが低く、素材の持つ本来の味を引き立てる。白身の魚料理やアンダルシア地方の郷土料理である野菜の冷製スープ「ガスパッチョ」とうまくマッチする。日本食では、刺身との相性がバッチリだ。シェリーを称えるスペインのことわざに、「おいしい料理にシェリーがないのは、美しいけれどほほ笑みのない女性と食事をしているようなものだ」とあるほどに魅力あるワインなのである。

スペインでシェリー酒は定番の調味料でもある。風味を増すために、ジャガイモのペーストに最後にミルクと一緒にフィノを加えたり、アサリの煮込みの仕上げに、フィノかマンサニーリャを小さじ1杯分加えるといった使い方がされている。地元のアンダルシア地方では、さらに多用されていて、パエーリャに使う野菜などを炒める時に隠し味としてフィノかマンサニーリャを加える人もいる。

シェリーは現在およそ60社がその生産に携わっている。スペイン国内での需要はビールの消費量の増加を前に減少していった。現在、スペイン国内での消費は生産量の35%くらいしかない。残りの65%は輸出されていて、特に英国、オランダ、米国での消費が多い。

長引く不況も影響して、シェリーの零細業者は減少が続いてきた。現在も生産を続けているのは、確固たる輸出先を持っている生産業者か、あるいは地元に根強いファンを持つ生産業者かのどちらかに限られる。また、シェリーとして認定を受けるための規定が厳しいことも、シェリー生産業者が減っている理由の1つだ。

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