無料放送局の「BS11」は地方でウケている 民放地上波とは異なる発想で番組を編成

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東京都千代田区にあるBS11の本社(写真:BS11)

BS11は地上波放送と比べて収益性も高い。2016年8月期の売上高は102億1200万円、営業利益は21億0800万円で、営業利益率は2割に達する。地上波で業績好調な日本テレビ放送網の2016年3月期の営業利益率15%よりも高い。

要因は、地上波とはまったく異なるコスト構造にある。キー局系列の地上波放送の免許は都道府県単位で交付される。そのため、東京キー局とローカル局が番組供給ネットワークで結ばれ、キー局は番組を全国で放送してもらうために各都道府県の系列ローカル局に電波料を支払う必要がある。日本全国に電波の送信が可能な無料BS放送では、このネットワーク構築が不要で「ネットワーク維持費」がかからない。そのため、地上波に比べ低コストでの放送が可能となっている。

BS11の売り上げは、主にタイム広告と呼ばれる放送時間枠の販売で成り立っている。広告主が媒体の広告枠を買い取り、広告主側で制作された広告を掲載する純広告はごくわずか。主な収益源は、朝5時台から夕方6時台までの専業主婦層をターゲットとした通販番組と夜11時台以降のアニメ番組。アニメは製作委員会への出資を増やして放送枠の販売を増加させている。通販会社への放送時間枠販売は、韓流ドラマを間に挟むことで視聴者をひきつけ、放送枠の単価を上昇させている。

見てもらえなければ意味がない

一方、ここ数年は番組制作費を積極投下して、自社制作の番組枠を拡大させてもいる。「自社で番組を作らず、韓流ドラマなど番組を調達して通販会社に放送時間枠を販売するビジネスモデルなら収益性は高められる。ただ、今以上の成長は見込めない」(経営戦略室局長の平山直樹取締役)。

放送時間枠は限られており、枠単価の上昇にも限界がある。今後の成長には、純広告を増やすことが必要だ。それには、視聴者を獲得するための他局にはない自社制作の番組が重要となってくる。4月以降は、開局10周年記念番組と銘打ち、自社制作の思い切った特徴のある特別番組を数多く放送し、反響が大きければ新番組としてレギュラー化する方針だ。

課題は認知度の向上だ。2011年の地上テレビ放送完全デジタル化を契機に、BSチューナー搭載テレビは累計1億3000万台出荷されてきた。パラボラアンテナ・ケーブルテレビを利用したBS放送視聴可能世帯も約4000万世帯、約7割にまで普及は進んでいる。ただ、独立局のBS11は、民放キー局系の無料BS放送局ほどの知名度がない。

「いい番組を作っても、見てもらえなければ意味がない」。二木氏は、駅前のまずいラーメン店と人里離れた場所にあるおいしいラーメン店を例に出し、今後は地方在住のシニア層をターゲットに新聞広告や地方テレビ局CMなど、広告宣伝を強化していく方針だ。具体的には、今2017年8月期の番組制作・購入費は、前期より8億円ほど増やし、売上高の30%の36億円を計画。広告関連費用は売上高の14%にあたる17億円弱と、前期より6億円ほど増やす。

地上波が伸び悩む中、新興勢力の独立局は視聴者を増やすことができるか。

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