あいりん地区で「孤立死」が日常化する意味

例外的な地域と見なす考えは時代遅れだ

あいりん地区内の公園に設置された無縁死者の祭壇

2005年以降、日本は出生者の数を死者が上回るようになった。そして2015年には年間死亡者が130万人を超えた(出生者は約100万人)。

ただ、その中には看取る人も弔う人もいない「孤立死」の死者(無縁仏)が相当数含まれている。2016年12月31日付の朝日新聞朝刊は、2006年度から2015年度までの10年間に全国の政令指定都市で引き取り手のない遺骨が倍増し、自治体が対応に苦慮する様子を報じた。団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、年間に約160万人が亡くなると予測されており、迫り来る「多死社会」の中での対応が急務となっている。

頻発する異状死

そもそも孤立死の何が問題なのか。

内閣府『平成22年度版高齢社会白書』では、死後、長期間放置されるような孤立死は、人間の尊厳を損なうものであり、死者の親族、近隣住民や家主に心理的な衝撃や経済的負担を与えることが指摘されている。そして、孤立死は生存中の孤立状態が死によって表明化したものととらえられている。

拙著『貧困と地域』で解説しているように、そんな孤立死が日常化しているのが大阪の「あいりん地区」(通称、釜ヶ崎)だ。

2016年8月に実施された「釜ヶ崎夏祭り慰霊祭」。近年あいりん地区では慰霊への関心が高まっている

あいりん地区の孤立死に関するまとまった行政データは存在しないが、関連するものとして大阪市職員の松藤栄治氏の研究を挙げることができる。

松藤氏はあいりん地区の住所不定者を対象にした相談機関「大阪市立更生相談所」が2003年度から2007年度にかけて敷金を支給した生活保護受給者を対象に調査を実施した。その結果、約10%が保護開始5年以内に死亡していること、そして、およそ半数が自宅での死亡・遺体発見であることを明らかにした。これらの死は多くの場合、誰にも看取られず亡くなる孤立死だと考えられる。

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