あいりん地区に見る「生活保護のパラドクス」 日本が直面する「社会的孤立」がここにある
近年、日本では社会的孤立が深刻な社会問題として認識されるようになっている。ちまたでは「無縁社会」という用語で社会的孤立現象が盛んに語られてもいる。
全国で見ると、2010年以降、「単独世帯」が「夫婦と子供から成る世帯」を上回り、最も多い世帯類型となったが、この傾向は高齢者においても顕著だ。内閣府の平成28年版高齢社会白書によると、65歳以上の単独世帯の割合は右肩上がりに高くなっている。1980年には10.7%だった65歳以上の単独世帯の割合は、2014年には25.3%にまで上昇した。
しかし、それは全国各地域で一様に起こっているわけではなく、問題の地域的集中、そしてその地域的な特徴に注目しなければならない。拙著『貧困と地域』で解説しているように、そうした社会的孤立が顕著なのが大阪の「あいりん地区」(通称、釜ヶ崎)だ。高度経済成長期に頻発した暴動で注目を集めた「日雇労働者の町」である。
あいりん地区は著しい高齢社会
社会福祉学者の河合克義氏は国勢調査のデータに基づき、社会的孤立が顕在化しやすい一人暮らし高齢者の出現率(65歳以上の高齢者のいる世帯に占める単身高齢世帯の割合)を自治体ごとに再集計した。そして出現率の高い自治体上位30位を(1)島嶼部、(2)過疎地、(3)大都市に類型化してみると、一人暮らし高齢者の出現率上位30位に該当する「大都市」の自治体は1995年に2件だけだったが、2000年に5件、2005年に13件、2010年に16件と著しく増加していることを明らかにした。
いずれの年でも、「大都市」のなかで突出して高い出現率を示しているのが、あいりん地区を擁する大阪市西成区だ。近年は元日雇労働者たちの高齢化だけでなく、他地域から生活に困窮した中高年男性が新たに流入したことも相まって、あいりん地区は著しい高齢社会となっている。西成区における一人暮らし高齢者出現率は1995年に43.3%、2000年に49.6%、2005年に60.7%、2010年に66.1%となっており、その増加率には目を見張る。
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