書店店長の「平凡な香港人」が語る自由の重み

禁書販売で中国に拘束、自殺も考えた顛末

中国当局に拘束された、銅鑼湾書店の店長、林栄基氏。中国で発売禁止の書籍を売ったことが原因だった(写真:今周刊)

香港で2015年10月、書店の店長など、5人が相次いで”行方不明”になる事件が発生した。

その書店の名前は銅鑼湾書店。中国で発売禁止とされる書籍を中国にも販売し、また中国の習近平国家主席を批判する書籍を出版していることで有名だった。8カ月後、行方不明になった関係者は、中国当局によって拘束されていたことが判明。「1国2制度」の下、言論の自由やビジネスの自由を享受してきた香港市民にとっては、秘密裏に香港人が拘束・監禁されていたことに、衝撃を受けた。拘束された一人が店長だった林栄基氏だ。

林氏は顧客名簿を持って、再び中国に入国することを条件に釈放されたが、中国に戻らなかった。香港で書店を経営するということ、本を愛するということ……。3月26日には香港の行政トップを決める行政長官選挙が行われる。民主と自治が問われるときを前にした香港で、一時は奈落の底に落とされた香港人の思いとは何か。

「流亡者」たちが集まった台北で

台北市の中心部から近い宝蔵巌。芸術村として整備されているここは、夜になるといつも静まり返っている。しかし、この日、夜遅くまで明かりが灯る一軒の小さな家があった。ここに大勢の「流亡者」たちが集まり、激論を戦わせていた。テーブルの上には茅台酒があり、この残りが半分を切ったところで、一人がテーブルを叩いた。すると全員による大合唱が始まった。

ここで流亡者になるには、刑務所暮らしの経験が必要だ。地下詩人の孟浪氏と貝嶺氏、ドイツ出版界の賞を獲得したことのある廖亦武氏は、いずれも中国で刑務所に入れられたことがある。彼らは祖国に帰ることができない、本当の「流亡」を余儀なくされた。そして、香港の銅鑼湾書店の店長だった林氏も、その一人だ。

ただ、林氏はまだ、香港に出入りすることができる。だから、厳密には流亡者とは言えない。この仲間たちの中では新参者だ。林氏は2015年に当局から拘束され、今に至るまでも話題の中心人物なのだ。この集まりは流亡者たちが林氏のために開いたものだった。

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