成功するリーダーには良い「聞き役」がいる 松下幸之助が語った成功するための経営哲学

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こういう三成のような人がいたから、秀吉は他の部下とか大将の前で、ほがらかに楽しく振る舞うことができたんやないやろうか。

それが、気分を晴らすこともできん、愚痴も言えん、煩悶を話すこともできんとなれば、もう直接、部下や大将にぶつけんといかんということになるわな。しかし、三成がいたからな。秀吉は、そんなことをせんでよかった。

信長には聞き役がいなかった

信長な、信長には、ああいう三成のような人間がいなかったからな。もし信長に三成のような人間がいたら、明智光秀の、あの謀反はなかったかもしれんな。

三成は、たいした戦功がなかったのに、あれほど重用されたのは、秀吉にとっての苦悩とか煩悶とかを聞いてくれる相手、しかも貴重な相手やったからやと言えるだろうな。まあ、いつの時代にも、こういう「聞き役」というか、そういうものが指導者には必要だと思う。

経営者にも、だから必要なわけや。社長に、そういう「聞き役」がおったならば、腹の立つことでも、苦しみでも、なんでも話して、気持ちを発散させて切り替えて、それで他の部下や大将には、いつもニコニコしながら、ああ結構や、結構や、あんた、きばりなはれ、やんなはれと言うことができるわな。そういう聞き役を持てるかどうか、見つけられるかどうか、運やろうけど、考えんといかんことやで、経営者は。

それとな、反対のことを話すようやけど、自分に「直言してくれる人」というか、「諫言(かんげん)してくれる人」というか、言うべきことを言ってくれる、そういう人も持っておかんといかんよ。

経営者として上に立てば立つほど、とくに身近な人からの声は聞こえてこなくなるな。そればかりではなく、いい話、耳当たりのいい話しか入ってこなくなる。

周囲の人たちの、ほとんどは、そうやなあ、9割は、そういう人やけどな。わざわざ自分が悪者になりたくもないし、できれば、上の人からいい人材だと思われたいということもあって、たとえ会社の発展につながることでも、その経営者や上司に都合の悪いことは言わない、たとえそれが経営者や上司のためになることでも、機嫌を損ねるようなことは言わないでおこうとする。

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