致命的に資料がわかりにくい人の6つの盲点 複雑な資料を「引き算」で劇的に変える

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たとえば、会議室に座っていて、非常に細かく書きこまれた複雑なスライドを見たときに、「うっ」と声が出そうになったことはないでしょうか?

あるいは、リポートや新聞を読んでいて、「面白そうだけど、ここから何を読み取ればいいかわからない」と理解するのをやめて、つぎのページをめくった経験はありませんか?

これらは、不必要な認知的負荷(Cognitive Load)の体験だと言えます。認知的負荷は、人間が新しい情報を得るときの脳の働きのことですが、言うまでもなく人間の脳の処理能力には限界があります。余計な認知的負荷は、相手の頭の処理能力を使わせるだけで、情報を理解させるうえでは何の役にも立ちません。

データや資料を使って受け手を動かしたいときは、この認知的負荷を最小限(でも、情報が十分に伝わる程度)に抑えることを考えましょう。

過剰、または無関係な認知的負荷を作り出す原因を、私は「クラター(ごちゃごちゃ)」と呼んでいます。クラターとは、スペースを取るばかりで何の理解も促さないビジュアル要素のことです。

このクラターは、相手に不快な体験をさせます(「うっ」という瞬間のことです)。資料を実際よりも複雑に見せてしまい、相手が理解を放棄することになれば、その時点でコミュニケーションが成立しなくなってしまいます。

視覚認知には法則がある

そうした事態を避けるためには、まず、伝えたい情報とクラターを識別しなければなりません。そのときに参考になるのが視覚認知のゲシュタルトの法則(Gestalt Principles of Visual Perception)です。

ゲシュタルト心理学は、1900年代初頭に、人間がどのように周りの世界の秩序を認知するのかを示しました。人々が視覚刺激をどのように受け取り、秩序を見いだすのかを説明したこの法則は、今日でも受け入れられています。

ここでは、「近接」「類似」「囲み」「閉合」「連続性」「接続」という6つのゲシュタルトの法則を簡単に説明しておきます。いずれも、見やすく、理解しやすいグラフを作るときの助けになる概念です。

人の視覚認知におけるゲシュタルトの法則
1.近接……物理的に近くにあるものを同じグループに属するものとみなす
2.類似……似た色、形状、サイズ、向きを持つものを同じグループとみなす
3.囲み……一緒に囲まれているものを同じグループとみなす
4.閉合……一部が欠けていても、頭の中にある全体の構造にあてはめて認識する
5.連続性……明確に連続性がなくても、最も自然な形でそれを見出す
6.接続……線などで物理的につなげられているものを同じグループの一部とみなす
次ページ「閉合」の法則の効果をあらわしたグラフ
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