日本株の上昇を阻んでいる「4つのイベント」 3月半ばまで、もう少しの辛抱が必要だ

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経済政策についても、今後どう変わっていくか、わかったものではない。実際大統領自身が、2月22日(水)に、「われわれが引き継いだ予算、米国の財政はめちゃくちゃだ」と述べた。そんなことは最初からわかっていたはずだ。おそらくこの発言は、「自分が選挙時にぶち上げていた、大規模な減税やインフラ投資などの金額は、実際の政策に落とし込む際に大幅に縮小することとなったが、これは自分が悪いのではなく、われわれに膨大な財政赤字を残して引き継いだ、オバマ(前大統領)がすべて悪い」と、後日に責任逃れをするための前振りだと考えられる。

大統領は2月9日(木)に、「2~3週間のうちに驚くべき税制改革が発表される」と語り、市場で話題となったが、最終的にものすごい税制改革が全く出てこなくても、きっとほとんど誰も驚かないだろう。

米株高は「大人のトランプ」が理由ではない

では、大統領の演説(米国時間は2月28日(火)夜)直後の3月1日(水)の米国市場で株価が大幅に上昇したのはなぜか。また米ドル高が進み、一時1ドル=114.50円を対円で超えたのは、どんな理由があったのか。

「大統領の演説は全く大したことがなかったが、特にひどいことも言わなかったため安堵感が広がった」という点も指摘されている。だがそれ以上に、米連銀高官が早期利上げを示唆する発言を連発したことが、米株や米ドル相場の上げ要因となった、という面がはるかに大きかったと考えている。

そうした高官の発言として、まず2月28日(火)に、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁と、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が、それぞれ「3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げを真剣に協議する」「引き締めの論拠は一段と説得力のあるものになった」などと指摘している。ウィリアムズ総裁は、タカ派(利上げに前向き)ではなく中立だと見なされているため、市場の注目を集めた。またダドリー総裁は、FOMCで投票権を有している(ニューヨーク連銀総裁は、常にFOMCで投票権を有する)。このあとも、3月1日(水)にはハト派の筆頭とみなされているブレイナード理事が、さらに同2日(木)にはパウエル理事が、早期利上げに向けて「ダメ押し」をした。

なぜ筆者が「大統領の演説より連銀高官の諸発言が効いた」と判断しているかと言えば、まず米ドル高円安に大きく振れ始めたのが、日本時間で3月1日(水)午前6時頃からであり、これは大統領演説のずっと前で、前記のダドリー総裁の発言が報じられたタイミングだった。

また3月1日(水)は米国株価が大幅に上昇した日だったが、S&P500指数が前日比で1.37%上昇したのに対し、同指数の業種別指数の動きをみると、金融株指数が2.84%の上昇と、他の業種を上回ってトップだった。これは、連銀の利上げにより貸出金利も上昇し、銀行の貸出収入が増加する、という期待によるものだ。全体論としても、「連銀が早期に利上げできるほど米経済が好調なのだろう」という観測が広まった可能性もある。

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