日本株の上昇を阻んでいる「4つのイベント」 3月半ばまで、もう少しの辛抱が必要だ

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米経済が良いからこそ「米株価も、米金利も、米ドルも上がる」という流れは、今後も中長期的には期待できそうだ。だが、米株価の上昇ピッチは速すぎるため、さすがに前週末にかけては下押しする展開となった。

日本株の上昇を阻む「4つのイベント」

さて、今後の日本株の動向であるが、大きな流れでは、米国の景気や企業収益のみならず、国内企業の収益も増勢を強めている。夏場までには、日経平均株価が2万1000円を超えてくる展開を予想している。ただし株価の上昇基調が鮮明になるのは今すぐではなく、3月後半以降となろう。というのは、3月にはこれから次のようないくつかのイベントが控えており、その前に不透明感が漂いそうだからだ。

1)米国で、予算教書の発表が予定されている。その日程は確定していないが、13日(月)前後との観測がある。

2)米FOMCが14日(火)~15日(水)に開催される。今のところは前述のように、米株式市場では、早期利上げは米経済の強さの表れという前向きな解釈がされているが、利上げするかしないかを見極めよう、との様子見の空気が広がりうる。加えて、実際3日(金)には、「大御所」のイエレン議長、フィッシャー副議長が、3月の利上げに踏み込んだ発言を行なったが、市場の好材料としては賞味期限が切れてきた感がある。

3)米国の債務上限は、時限的に効力が停止されているが、停止期限は3月15日(水)までであり、その後は効力が復活する。それまでに、議会で債務上限の引き上げを決定する必要がある(ただし、当面は米財務省の「埋蔵金」などで泳ぐことは可能)。

4)オランダの議会選挙が15日(水)に予定されている。反イスラム・反EUを掲げる自由党が第1党になる可能性がある。

こうした諸イベントで投資家心理が悪化しているとすると、延期されていた東芝の決算発表(来週にも発表するとされる)が、さらに心理を冷やす恐れもある。

したがって、3月半ばまでは、日米等主要国の株価が、頭が重い、あるいは若干下値を探る、といった動きに終始することが懸念される。ただし、日本の企業収益の改善といった大きな流れがあるため、下値があっても限定的だろう。さらに諸イベントを通過した3月後半からは、再度日本の株価が上昇色を強めるだろう。

こうしたなかで、今週(6日(月)~10日(金))に限っての日経平均のレンジとしては、1万9000~1万9550円を予想する。昨年来高値(終値ベースでは1月4日(水)大発会の1万9594円、日中値(ザラ場)ベースでは3月2日(木)の1万9668円)を再度抜くには、あと少し時間が必要だと見込んでいる。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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