米FRBイエレン議長、3月利上げに言及 海外リスク後退で、今後の見通しに自信
[シカゴ 3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は3日、雇用をめぐる指標とインフレが力強さを維持すればFRBは今月の会合で利上げを決定すると述べた。これまで低金利を維持する要因となってきた海外のリスクが低減しているとし、3月利上げに言及するとともに、年内に一段と金利を引き上げる意向を示した。
イエレン議長はシカゴで行った講演で「今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って引き続き進展しているかどうか検証する」とし、引き続き進展していれば「フェデラルファンド(FF)金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた。
早期利上げを示唆するFRB高官の発言を受けて、足元では3月利上げ観測が8割まで上昇していたこともあり、議長の発言に対する市場の反応は限定的だった。
ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏は「議長は来週の雇用統計がよほどひどい内容にならない限り、3月利上げを支持する立場を示した」と指摘。「3月利上げは織り込み済みというだけではない。すでにお膳立てまで整っている状況でほぼ確実だ」と話す。
イエレン議長は講演で、自身の議長就任以来初めて国内外で差し迫った問題が見当たらない状況となっているため、今年は金利はより速いペースで上昇していくと公算があると指摘。「特に海外に起因するリスクは幾分後退したように見えるため、全般的に一段の緩やかな経済成長の見通しは有望であるように見える」と述べた。
FRBは過去3年、米経済が金融危機から緩やかに回復するなか、利上げを度々阻まれてきた。世界的な低インフレやドル高による景気下押し、エネルギー価格の急落で金利軌道は修正を余儀なくされた。
だが議長は「金融緩和の解除ペースは2015、2016年ほど遅くない可能性が高い」と指摘。FRBは今年、見通し通り3度の利上げを実行できるかもしれない。
また議長は、FRBが掲げる雇用の目標はおおむね達成され、インフレは上向いているとの認識を示した。
移民は労働力の伸びに大きく貢献しているとし、労働力が一段と速いペースで拡大しない限り、米経済の潜在成長率は2%程度との見方を示した。
トランプ政権の経済政策をめぐっては著しい不確実性が存在するとし、現時点でFRBの利上げ見通しは概ね、トランプ氏の政策ではなく、経済指標に基づくものだと述べた。FRB当局者の大半は、トランプ政権の経済政策の内容を忍耐強く見極める立場だとした。
議長はまた、海外経済のリスクは一段と均衡したとし、トランプ政権の財政刺激策とともに、世界経済の状況変化が見通しに影響を与える可能性があるとの見方を示した。中国、日本、欧州の経済指標はいずれも前向きな内容となっていると指摘した。
中国の為替管理をめぐっては、より良く理解されるようになったとし、ボラティリティーが低下したとの認識を示した。
この日はFRBの正副議長がほぼ同時に講演。フィッシャー副議長は「昨年11月の大統領選以降の経済や資産市場の動向、それに『アニマルスピリット』を加味すると、米経済に著しい資産効果があることに気付くだろう」と指摘。トランプ大統領の経済政策により景気に上振れリスクがあることを示唆した。
さらに早期利上げを示唆する最近のFRB高官の相次ぐ発言について聞かれ、「(利上げ観測を高めるための)意識的な取り組みがあるとすれば、私も加わる」と言明。世界経済の改善や米経済の安定に加え、減税など財政刺激策によるインフレ高進や景気拡大の可能性といった新たな現実に直面する中、FRB当局者が足並みをそろえて市場の利上げ予想を引き上げようと注力していることが浮き彫りとなった。
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