将来推計人口の怪、甘い出生率予測は禁物だ 公的年金に必要な指標の公表が遅れている

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今回の将来推計人口も、今年の1月あたりに公表されるものと思われていた。1月末に、いくつかの報道機関が今回の将来推計人口について報じていた。これらによると、出生率(厳密にいえば、合計特殊出生率)の将来見通しについて、前回の2012年の推計では1.35としていたものが、2065年に1.4台前半程度になると予測しているという。これは、2015年の出生率が1.45だったことを受けてのことという。

出生率が上がると人口減少のペースも緩やかになるのは当然である。総人口が1億人を割る年を、前回の推計では2048年と予測していたが、今回の推計では2053年ごろと、5年遅くなると報じられた。これには、今回の推計の前提となる2015年の国勢調査の人口が、前回2012年に推計した2015年の人口予測を上回ったことも影響しているとみられる。ちなみに筆者は、報道以上の情報を持ち合わせていない。

今回の将来推計人口は、2月上旬に公表と記事で示唆するものまであった。報道は総じて中立的で、公表される予定の数字をそのまま報じており、特段の論評はなかった。

「1.4台の出生率を見込んで大丈夫か」

しかし、2月上旬どころか、2月内にも結局公表されなかった。厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会人口部会が開催されて、新たに作成した将来推計人口が、その会合の場でお披露目となる。この会合は通常、報道関係者も会場にて傍聴できるようにしているため、開催の約1週間前には厚生労働省のウェブサイトに案内が出る。3月3日現在で開催案内が出ていないのは、まだ新たな将来推計人口の公表予定が立っていないということだ。

新たな将来推計人口の報道が出た直後、筆者が親しくしている経済学者の間では、「政府は出生率をそんなに高く見込んで大丈夫なのか」との疑問の声が支配的だった。出生率を高めに見込むと、年金財政の予測は楽観的になるからだ。

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