「ぺんてる」が高級シャーペンに秘めた超技術 価格は3000円!ノック不要の「オレンズネロ」

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スマッシュが人気なのは、書き心地の良さはもちろん、長く書いていても手が疲れない、といったことが理由のようだ。「先金(さきがね)」と呼ばれる、芯を支える部分が本体と一体化しているため、安定感がある。先金が着脱できるタイプでは、振動で接合部がゆるんできてガタつくことがあるのだ。また、グリップの部分にラバーが採用されていることや、ペン先のほうに適度な重みがあり、力を入れなくても書けるため、疲れにくい。

高機能・高価格シャーペンブームのきっかけは、三菱鉛筆が2008年に発売した「クルトガ」だったという。書くごとに芯が回って尖った状態を維持できるため、均一な太さで書けるという革新的な機構が消費者の心をつかんだ。

その後、芯が折れないということを売りにした商品も出始めた。ぺんてるが2014年2月に発売した「オレンズ」シリーズや、ゼブラが同年に発売した「デルガード」がある。いずれも、450〜500円程度で、グリップ部分を金属にするなど付加価値を与えた、1000円程度の高級モデルが出そろっている。

では、どのような層がこうした高価格帯のシャーペンを使っているのだろうか。

「性能が飛躍的に向上しているので、社会人にももっと使ってほしい」と話す、ぺんてるの丸山茂樹氏(左)と我孫子大慶氏(撮影:風間仁一郎)

「やはり中学生、高校生がメインです。ツイッターの反応を見ると、ノートをきれいに取れて、芯が折れるイライラがないので、試験中も集中できるといった感想があるようです。その他、最近では社会人も使っているようです。小型手帳にびっしりと書き込みたい人にとっては、きれいに書けることのほか、消せるというメリットが大きいみたいですね」(丸山氏)

ぺんてるだけが作る「0.2ミリ以下」の芯

高機能シャーペンが群雄割拠する中でも、ぺんてる商品の大きな特徴となっているのが、芯径の細さだ。クルトガ、デルガードは芯径0.3ミリメートル(以下、ミリ)、0.5ミリ、0.7ミリというラインナップなのに対し、オレンズシリーズは0.2ミリ、0.3ミリで勝負する。技術的なハードルが高い0.2ミリ以下の芯を作っているのは、ぺんてるだけだ。

芯が細いと、使う側からすれば、細かい文字が書けることになる。しかし、メーカー側にとっては、芯が細くなるほどに開発や製造の難度が上がる。それでも業界一の細い芯径にこだわるのは、ぺんてるの技術力に懸けるプライド、いわば「職人魂」を示すものだといえる。

このように、シャーペンの高機能化が先導する形で、市場が拡大、高価格化し、さらに技術の切磋琢磨が進んできたというのが、シャーペンを取り巻く状況のようだ。

「デジタル化の大きな流れはあります。それでも、やはりスケジュール帳に書き込む、企画のアイデアを考える、メモをとるなど、手書きのスタイルはなくなりません。また、消せるペンも売れていますが、大量に消せることや、経年によるインキの劣化がないことなど、シャーペンならではの利点もあります。何より、『シャープ』の名のとおり、線がシャープなのが魅力だと思います」(丸山氏)

ではいよいよ、今回発売の「オレンズネロ」の開発について触れていくことにする。高価格化が進んでいるとはいえ、従来の3倍、同社のなかでも日用品としては1番の高額商品となる。その開発のきっかけはどんなことだったのだろうか。

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