「人生100年時代」への対応の遅れは大問題だ 長寿国の日本こそ「マルチステージ」化が必要

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同著では、架空の3人の人生が例示され、「100年時代」における「3ステージ」の問題点と、「マルチステージ」化に向けた意識改革の必要性を議論している。

「お金の問題がすべてではない」と強調しているが、著者の1人は経済学者であり、人生における資金計画にも多くのページが割かれている。

3人の登場人物は世代が異なるものの、典型的な「3ステージ」の人生を望んでおり、「老後の生活資金は最終所得の50%」「長期の投資利益率は年平均3%」「所得の上昇ペースは年平均4%」「65歳で引退希望」などの想定で人生を送ることになる。このような仮定を置くと、平均寿命が人生における資金計画を大きく左右することになる。

無形資産を含めた4つの資産が必要に

1945年生まれのジャックの引退後の人生は約8年(平均余命から逆算)。勤労期間に毎年の所得の4.3%を貯蓄すれば、引退後も希望する生活水準を維持できる。他方、1971年生まれのジミーの平均寿命を考慮した引退後の人生は約20年、毎年の所得の17.2%を貯蓄し続けなければいけないことになる。同様に、1998年生まれのジェーンは引退後の人生が35年と予想され、毎年の所得の25.0%を貯蓄する必要があるという。ジミーとジェーンに求められる貯蓄率はあまりに高い。

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結果的にジミーとジェーンは「3ステージ」の人生を想定したままでは資金計画が破綻する可能性が高い。

したがって、①貯蓄などの「有形資産」だけではなく、②知識や職業上の人脈などの「生産性資産」、③健康などの「活力資産」、④多様な人的ネットワークや自分についての知識などの「変身資産」をバランスよく蓄えることで、人生におけるステージを増やすこと(マルチステージ化)が重要だという。これらの資産を蓄積する結果、引退年齢が遅くなり、生涯の資金計画にも余裕が生じる。

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