マツダの悩みは「トランプリスク」より深刻だ 屋台骨の米国と日本で販売がつまづいた理由

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しかし、たとえばマツダ6は競合車種とのインセンティブの差が2000ドル近くになり、競り負けることが多くなったことから軌道修正を迫られている。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは「車の実売価格は市場が決める以上、インセンティブを一定程度積み増すことは致し方ない。販売低迷が続くとディーラーの経営が疲弊し、結果として販売改革の良い流れも妨げてしまう」と指摘する。

日本での販売も新型車効果の一巡で厳しい。通期では5000台下方修正し、20.5万台(前期比12%減)の見込みだ。2016年は主だった新型車の投入がなく、4車種で商品改良を行ったが、小型車の「CX-3」や「デミオ」の販売が芳しくない。

国内では低価格グレードの拡充が急務

国内で販売されているCX-3は、ガソリン車よりも高価格なディーゼル車しか設定がない。また、現行のデミオは廉価グレードで135万円と、旧モデル(同114万円)に比べ約2割も上昇し、競合車種と比べても高めだ。手頃な価格の実用車を求める消費者に応えられていないことを認識したマツダは、小型車で「量販価格帯のグレードの拡充で今後反転を図る」(青山執行役員)方針だ。

マツダは2012年以降、環境性能と走行性能を両立させた「スカイアクティブ」技術を搭載し、躍動感のある「魂動」(こどう)デザインを採用した新世代商品群が軒並みヒット。これが業績回復に繋がった。第一弾となったSUV「CX-5」発売以降の4年間では世界販売が2割以上も伸びた。

しかしこの数年間マツダが謳歌したブームはすでに一巡したようにもみえる。平時に戻った今こそ、商品のグレード展開や価格設定などで消費者のニーズに真摯に向き合わなければ持続的な成長はおぼつかない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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