輸入車王者ベンツ、快進撃の裏に潜む「不安」 国内外で過去最高台数でも「収益性」に懸念

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こうしたディーラーにとっては、2016年夏にフルモデルチェンジした新型「Eクラス」(675万円~)の納車本格化が待ち遠しいところだ。Eクラスは発表されたのが年の半ばである7月だったにもかかわらず、2016年暦年での販売台数は7900台。日本自動車輸入組合が発表した外国メーカーのモデル別販売台数で9位にランクインするなど、ベンツの中核車種だ。

発売直後から好調な「Eクラス」(写真はステーションワゴン)。生産の本格化が待たれる(記者撮影)

ただ、この販売台数よりも実際の受注台数はもっと多い。成長市場の中国を筆頭に世界中に新型車の供給を振り分ける必要があるが、昨年Eクラスはとりわけ世界的に供給が追いついておらず、日本でも「玉が足りない」(前出のディーラー)という声が出ていた。

「今年はEクラスの生産スピードが上がってくる」(MBJの上野社長)ことから、日本でも玉不足が解消されるかどうか、ディーラーからの期待は高まっている。

販売現場には今まで以上の負担

200万円台のコンパクト車「スマート」でも、1000万円台の旗艦車種「Sクラス」でも、「営業活動から成約、ローンの加入手続き、保険加入手続き、納車など、ディーラーが行うべき手間は、車の価格帯によらず基本的には同じ」(別のベンツディーラー関係者)。継続的にメルセデス・ベンツとスマートの両ブランドで年間7万台を売ることは、販売現場には従来以上の負荷がかかることになる。

現時点でベンツの日本国内での保有台数は約68万台へと拡大しており、「(車検や修理などの)整備現場が逼迫してきている」(前出のベンツディーラー関係者)という嬉しい悲鳴も聞こえる。小型車比率の高まりで新車販売1台当たりの利幅縮小が懸念されるが、保有台数が増えれば、ディーラーにとっては車検やアフターパーツ販売での売り上げ増が見込めるといううま味も出てくる。

MBJとしても「2016年はメンテナンスパーツやタイヤ、アクセサリーを販売するアフターセールス事業での売上高が前年比9%増を達成した」(上野社長)と手応えを感じている。

昨年はグローバルでは130周年、日本法人としても設立30周年だった。そんな節目の年に販売を加速させたMBJ。今年2017年もベンツとスマートの両ブランドで年間販売7万台を目標に、前年を上回る販売を計画する。

「かなり頑張らないと達成できないが、SUV系の安定的な販売やディーゼル車の販売で、昨年超えができる立ち位置だと考えている」。社長就任5年目を迎える上野社長は、今年も攻めの姿勢を貫く。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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