「持ち家」リスクを甘く見ている人が招く不幸 高齢マンションの滞納金問題は深刻だ

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だが、仕事上で弁護士と付き合いがあり、法律問題にも強い1人の住民が、管理組合の理事長に就任したことがきっかけで状況が改善。訴訟を起こして、強制競売に持ち込んだ。滞納分のおカネを回収することができたが、短い期間の滞納者は常時発生している。

週刊東洋経済1月23日発売号(1月28日号)は『持ち家が危ない マイホームが負動産になる』を特集。マンション・戸建てを取り巻く「持ち家リスク」を取り上げている。上記のような分譲マンションのリスクでは、滞納問題に加えて、管理会社の業務委託費高騰、修繕積立金不足などに直面する管理組合を実際に取材し、リアルにその悩みと対応策を紹介している。

マンションの築年数が長いほど滞納率は上がる

滞納問題はマンションの築年数が長ければ長いほど、より深刻化する。国土交通省の「マンション総合調査結果」(2013年度)によると、「3カ月以上の滞納者」が発生しているマンションの割合は、築年数10年未満では24%だが、築40年以上では55%に達する。

千葉市にある築44年の千城台グリーンハイツ・管理組合では、住民の高齢化が進んで滞納問題が深刻化するなか、これまでの自主管理ではなく、経理・会計など一部業務を管理会社に業務委託する道を選んでいる。

老朽化マンションにはさまざまな問題が山積する(写真:スイマー / PIXTA)

「1年以上の滞納者」は築10年未満では8%だが、築40年以上になると24%になる。築40年以上のマンションの4件に1件は「1年以上の滞納者」が最低1世帯はいる計算になる。住民と同じでマンションは確実に〝年を取る〟ことを考えると、滞納問題がより大きな問題に発展していくことは間違いない。

横浜市金沢区のシティ能見台つどいの街・第3管理組合はマンションの管理を管理会社に「丸投げ」していたことで管理コストの高騰や景観の悪化を招いた。危機感を募らせた管理組合の理事長が中心となり、ひとつひとつ改善策を実施していった結果、マンション住民間に自主的に活動する動きが出てきて、徐々に問題が解決。空き家が出てもすぐに買い手が付くなどマンションの資産価値向上を果たしている。

マンションの区分所有者(居住者)に負担が義務づけられている管理費・修繕積立金が支払えなくなる理由はさまざまだ。孤独死を含めて所有者の死亡から発生する相続問題(マンションAの例など)、経済的困窮(マンションBの例など)、破産・倒産、管理会社・管理組合への不満など理由は1つではない。

管理費や修繕積立金の滞納者が増えれば、管理組合会計の収支が悪化し、適切なマンション管理や共用部分の改修工事である「大規模修繕工事」が計画通りにできない恐れもある。それはまさに、マンション資産価値の低下を招く。滞納問題は理事会(理事長)が中心となって、居住者全員で組織する管理組合で真剣に対策を考えていかねばならない問題なのだ。
 

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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