北朝鮮亡命外交官が語った「金王朝の弱点」 「民衆蜂起が発生する可能性もある」
2016年7月、韓国に亡命した元北朝鮮外交官・太永浩(テ・ヨンホ)氏(駐英北朝鮮大使館公使)は最近、活発な対外活動を行っている。金正恩政権の実像を伝えるためだ。
1月12日、「ソウル新聞」とのインタビューに入る前、太氏は記者に「必ず記事にしてくださいね」と念を押すなど、積極的な姿勢を見せた。彼は「北朝鮮専門家と北朝鮮の概念について多くの論争を行った。北朝鮮は共産社会ではない、一つの奴隷社会に過ぎない」と強調する。
太氏は金正恩(キム・ジョンウン)政権の脆弱な部分について、まず正統性が不足していること、統制システムが弱まっていること、政策がない点などを挙げた後、「北朝鮮当局の政策に反発する芽が伸びているが、この芽を元に、今後民衆蜂起が発生することがあると思う」と述べた。以下、長文になるがインタビューの模様だ。
北朝鮮は共産社会ではなく奴隷社会だ
――北朝鮮が共産社会ではなく、奴隷社会だと自覚したのはいつごろからか。
1990年代末からスウェーデンやデンマークで生活し、それまで知らなかったことを知るようになった。自由民主主義体制について知る中で、「本当に北朝鮮という社会は共産社会ではなく、奴隷社会だな」と思うようになった。世襲統治と共産主義は、はっきりと違う概念だ。北朝鮮という社会は、一つの奴隷社会だ。奴隷社会という観点から出発してこそ、対北政策は政略的なレベルから抜け出し、統一的な見方からアプローチできるように思う。
――北朝鮮の対南(韓国)政策において、金正日(キム・ジョンイル)総書記と金正恩党委員長との違いは何か。
金正日時代には、相当洗練された、かつ隠密な政策が行われていた。当時も核開発を止めなかったが、朝鮮半島非核化というオブラートで包んでいた。
当時の中国が「核開発をするな、金日成主席の遺訓ではないか」と圧力をかけてきたのに対し、金正日は「われわれは核開発が目標ではない。しかし、米国と韓国が核戦争の練習をしており、その対応策をとらなければならない」と主張していた。
一方、金正恩はオブラートに包むこともなく、核政策を公式・公開的なものにした。外交政策でも金正日の時は洗練・緻密なものだったが、金正恩は雑なものになった。米国、韓国、中国、ロシアへの対応は、わがままを押し通すだけといったものになっている。