欧州でテロ攻撃が止まらない。フランスのパリでは2015年末、大規模な同時多発テロが発生。死者約130名、負傷者は300名以上にも上った。2016年はドイツが標的となり、7月、バイエルン州のビュルツブルクを走行中の電車内で旅行者が斧とナイフで襲われたのを皮切りに、その4日後にはミュンヘンで銃の乱射事件が起こった。そして同年末には、ベルリンでトラックの突入事件が起こり、12名が犠牲となった。
フランスとドイツだけではない。英国、オランダやベルギーにおける大都市でも、テロの危険が高まっている。日本の外務省が発表している「テロの脅威マップ」は、色分けして危険度を示しているが、ほぼその図解どおりに事件が発生している。このマップは日本政府の得た情報に基づいて作成されたものであり、欧州ではもっと詳細な情報に基づいてテロ攻撃に備えているはずだが、それでも防げないのだろう。
いずれの場合も過激派組織のIS(イスラム国)が犯行声明を出した。実際にISがどの程度関与しているかについては諸説あり、犯行に及んだ者が自発的にISだと名乗り出る場合もあると言われている。
難民・移民に反対する右派の台頭
欧州ではテロと並んで、難民・移民も深刻な問題となっている。難民・移民とテロは別問題であり、両者を安易に結びつけるべきでないが、難民の中には、不満を抱いて犯罪に走る者も残念ながら少なくないようだ。
欧州諸国の政府はテロを強く非難しつつ、難民・移民を擁護しようとしているが、どの国でも難民・移民の受け入れに反対する右派政党が顕著に勢力を増大させている。今年は選挙の年であり、3月のオランダ議会総選挙、4~5月のフランス大統領選挙、6月のフランス国民議会選挙、9月のドイツ連邦議会選挙などが行われるが、右派が票を伸ばすことは確実視されている。右派勢力はこれまで獲得票を増やしても大勢に影響はなかったが、今年は政権を取ることもありうるとさえ言われている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら